航空会社に公的支援の備えを、資本注入や2強合併も視野-竹中氏
(ブルームバーグ): 菅義偉政権が新たに設置した成長戦略会議の有識者メンバーで慶応大学名誉教授の竹中平蔵氏は、新型コロナウイルスの影響で苦境に立たされている航空業界に対して、資本注入を含む大胆な公的支援の実行に向けた備えが必要だと提言した。さらに資本注入をてこに業界再編を進めるべきだとの考えを示した。
竹中氏は20日のインタビューで、ドイツ政府がルフトハンザ航空救済の一環として資本注入したことに「大変注目している」と発言。公平な競争をゆがめる可能性があることから「普通はあり得ない」が、新型コロナを言い訳に思い切った政策がとられているとし、「日本もやるべきだ」と語った。
感染の拡大による移動制限などで旅客需要が蒸発し各社の業績が急速に悪化する中、英ヴァージンアトランティック航空など経営破たんに追い込まれる会社も出ている。感染再拡大による需要低迷の長期化懸念が高まる中、人員や機材の削減など自助努力には限界があるとし、国際航空運送協会(IATA)は各国政府の追加支援の必要性を訴えている。
航空会社への公的支援では、ルフトハンザの株主がドイツ政府による90億ユーロ(約1兆1150億円)の出資を含む救済案を6月に受け入れ、エールフランスKLMもフランスとオランダの政府から金融支援を得た。国内航空会社は政府系金融機関の融資や着陸料の引き下げなどの支援を受ける一方、ANAホールディングス(HD)や日本航空(JAL)は劣後ローンや公募増資による財務強化を図っている。
竹中氏は航空業界への支援について、「政策投資銀行で融資するとか、今ある仕組みでやることは止血としては当然意味があるが、もっと大きな仕組みの中でやらざるを得ない時が来る気がする」と述べた。
その上で、不足した資本の注入だけでなく業界再編といった「プロアクティブ(先を見越した)な行為もできるような産業再生機構のようなもの」を新たに設立することも有効との認識を示した。新型コロナを契機とした業界再編では、韓国の政府系銀行の支援の下、大韓航空がアシアナ航空の買収を発表している。