名字博士が解く、「藤井」のルーツとは？
藤井（ふじい）
藤井聡太7冠の「藤井」。「佐藤」や「伊藤」のように末尾に「藤」がついて「～とう」と読む名字は藤原氏一族の末裔であることが多いのですが、「藤」を「ふじ」と読んでいるは場合は違うことが多いのです。 では何に由来しているかというと、多く場合は植物の「フジ」に因んでいます。 「フジ」というと、今では公園などで藤棚が咲く観賞用の植物を思い浮かべます。しかし、これはノダフジという改良された新しい品種です。 名字の由来となっている「フジ」はもっと古く、野山に自生するつる植物の「フジ」のことです。古い時代にはカズラなどのつる植物も、広く「フジ」といいました。こうしたつる植物は西日本の山間部ではごく普通に自生しているため、西日本では「藤」のつく名字がたくさんあります。 では「藤井」の「井」とは何でしょうか。こちらも「井」と聞くと「井戸」を思い浮かべる人が多いのですが、みなさんがイメージする井戸が普及したのは江戸時代のことです。 名字ができた時代はもっと古く、当時の「井」は、生活に必要な水を得る場所を指していました。つまり、田んぼに水を引く用水路や、生活に必要な水を汲む水汲み場もすべて「井」なのです。 こうした「井」は生活に必要ですから、村には必ず「井」がありました。「藤井」というのは、つる植物の「フジ」がある「井」だったと思われます。
森岡浩／Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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