センバツ2022 星稜、もぎとった /石川
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)で2年ぶり15回目の出場の星稜は大会第4日の22日、1回戦で前回大会4強の天理(奈良)と対戦し、延長戦の末に5―4で勝利した。昨秋の公式戦で見せた接戦の強さを大舞台でも発揮し、林和成監督が現役時代の30年前に敗れている強敵を降した星稜。次戦は大会第8日の第1試合(26日午前9時開始予定)で、大垣日大(岐阜)とベスト8をかけて対戦する。【深尾昭寛、山口敬人、浅野翔太郎】 延長十一回の裏、1点差に迫られ、なおも2死一、三塁と一打サヨナラのピンチで、八回途中から救援した武内の直球に差し込まれた相手打者の打球が投手前に上がる。武内が大事に捕球して激闘に終止符が打たれると、アルプススタンドは大歓声に包まれた。 雨の影響で、試合は開始予定から約3時間半遅れで始まり、影響が心配されたが、星稜のエース、マーガードは初回に天理の打線の主軸・戸井を三振に打ち取るなど好投を見せ、スコアボードに「0」を刻む。三回までのパーフェクトピッチングにスタンドの母恵子さん(57)は「みんなの支えでここまで来た。今が恩返しの時」とマウンドの我が子に声援を送る。 四回、星稜打線が相手投手を捉える。二塁打で出塁した角谷を続く荒木がバントで三塁に送ると、津沢の犠飛で生還。待望の先制点が入り、スタンドは盛り上がる。父健吾さん(47)は息子の活躍に「よくやってくれた。だが1点では安心できない」と息をのむ。 マーガードは七回まで相手を無得点に封じ、1点リードで迎えた八回には斉賀の適時二塁打で貴重な追加点を挙げる。しかしその裏、好投してきたマーガードが2点適時打を許して同点に。星稜は武内への継投を選択。武内は2死満塁のピンチを気迫の投球で三振に打ち取って、勝ち越しを許さない。 譲らぬ両者の戦いは延長戦に突入する。十回に1点ずつを取り合い、十一回表、星稜はスクイズを失敗するも、2死一、三塁の場面で一塁走者佐々木が盗塁を試み、相手守備の乱れを誘って2点を勝ち越し。その裏に1点を奪われたが、粘る天理を振り切った。 ◇スクイズ失敗で火 佐々木優太捕手(3年・主将) マーガード、武内の2投手をリードし、大接戦での勝利に貢献した。試合終了後、「2人とも直球、変化球ともに気持ちがこもって低めに集まっていた。いい投球をしてくれた」と仲間をたたえた。 出場予定だった2020年のセンバツ中止や、昨夏の石川大会を部員の新型コロナウイルス感染で途中辞退するなどコロナ禍に翻弄(ほんろう)されてきた上級生の思いを背負ってきた。さらにセンバツを最後に退任する林和成監督への感謝の気持ちを前面に出し、主将としてチームをまとめてきた。 初戦の相手は、林監督が現役時代のセンバツで敗れた天理。リードで投手を引っ張り、打つ方では、延長十一回にスクイズを失敗したが、走者として仕掛けた盗塁が相手守備の乱れを誘い、自らも激走して決勝点となるホームを踏んだ。「スクイズを決められず申し訳なかったが、サインを受けて絶対に点を取ってやろうと思った」と振り返った。 センバツに向け「林監督を日本一の男にする」と誓ってきた。初戦突破で最初の関門を突破、次戦でも活躍を目指す。【深尾昭寛】 ◇コンバット復活 ○…今大会はアルプス席でのブラスバンドの生演奏が復活し、星稜の吹奏楽部が奏でる軽快なメロディーが応援を盛り上げた。この日は49人がオリジナル応援曲「星稜コンバット」など計11曲を準備。金子絢音(あやね)部長(17)は「貴重な体験をさせてもらって感謝している。私たちの応援が選手たちに届けば」と話した。