回転寿司チェーンで“ひとり負け”状態のかっぱ寿司。大手3社と分かれた明暗
1兆円市場に迫る回転寿司市場。ここまで拡大できた要因は、高級だった寿司を低価格で提供できるシステムを確立し、幅広い客層に支持されたからである。厨房に調理ロボットなどの機械を導入し、未経験者でも調理できるようにし、ネックだった人件費の高い職人が必要ないコックレス体制を確立。 案内~注文~会計までを無人でできる仕組みも確立し、ホールの人件費も抑制。そして実現した業務プロセスの自動化・省力化で、安価で価値ある寿司を中心に品数を増やし、店の価値を高めてきたからだ。今回はスシロー、くら寿司、はま寿司の上位3社と、下剋上を狙う魚べい、かっぱ寿司の2社を分析したい。 ⇒【写真】回らない回転寿司「魚べい」も好調
各チェーンが粗利ミックスを有効活用
回転寿司チェーンの洗練されたビジネスモデルは世界から注目されており、インバウンド効果で急増中の外国人旅行者にも大人気だ。店の特徴としては、売価は均一価格で注文しやすくしているが、原価は均一ではないために原価率70%もあれば20%もあるなど、ばらつきが大きく、トータル原価率で40~50%になっている。 ネタが小さければ顧客不満足の主要因になる一方で、ネタに原価をかけ過ぎれば採算が合わず、店の経営が継続できなくなる。この加減が難しいが、同質化競争の中で、各社が知恵を絞り、競争優位性の確保に力を注いでいる。 例えば、スシローの看板ネタであるマグロは原価60%を超え、こればかり食べられると原価的には厳しく、何とか低原価のネタと組み合わせて原価調整しているが、それでもスシローの原価は50%である(公式サイトより)。各店が、原価率の異なる商品をトータルで管理し、利益を創出するために、粗利ミックスを有効に活用している。ちなみに客単価は1000円程度で、1000円あれば満足できる業態だ。
業界を競争地位的に分析してみると
国内店舗数では、1位の「スシロー」642店(24年4月時点)、2位「はま寿司」570店(23年6月時点)、3位「くら寿司」546店(24年3月時点)、4位「かっぱ寿司」311店(2024年7月5日時点)、5位「魚べい」169店(2024年6月時点)となっている。 売上では1位「スシロー」3017億円(FOOD&LIFE、23年9月期)、2位「くら寿司」2114億円(23年10月期)、3位「はま寿司」1971億円(ゼンショーHD、24年3月期)となっており、上位3社で売上が6931億円でシェア75%と、市場(9250億円)を牽引している。 4位の「かっぱ寿司」722億円(カッパ・クリエイト、24年3月期)、5位「元気寿司グループ」618億円(魚べいと元気寿司、24年3月期)も含めると上位5社だけで8442億円(海外市場含む)となっている。コロナ収束後の回転寿司の上位チェーンの成長は著しく、上位5社だけで、1兆円を超えるのは時間の問題だ。