打倒RAV4! 「CR-V」はホンダが放った乗用車感覚の都会派クロスオーバーSUV、198万円でデビュー【今日は何の日?10月9日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、都会派クロスオーバーSUV「CR-V」が誕生した日だ。街乗りでもオフロードでも快適に走れるSUVとして、前年に登場したトヨタ「RAV4」とともに大ヒットし、本格オフローダーが人気だったSUVに新たなジャンルを開拓した。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・CR-Vのすべて ■RAV4に対抗したホンダのCR-V登場 ホンダ・CR-Vの詳しい記事を見る 1995(平成7)年10月9日、ホンダはセダンの快適性やワゴンの使い勝手に加えて、悪路の走破性を合わせ持つ乗用車感覚の4WD「CR-V」を発表(発売は10月12日)。CR-Vは、当時ホンダが進めていた“クリエイティブ・ムーバー(生活創造車)”の第2弾である。 オデッセイに続いたクリエイティブ・ムーバー第2弾CR-V 1980年代後半から市場を席巻したRVブームに上手く乗れなかったホンダは、独自に“クリエイティブ・ムーバー”というコンセプトの新型モデルの開発に取り組んだ。クリエイティブ・ムーバーとは、実質的にはRVと同じような位置付けのクルマだが、“使う人の生活をより楽しく、豊かに広げていける生活創造車”という考え方で、具体的には広い室内空間を持つ、走行中でも停車中でも楽しめるクルマを指す。 その第1弾が、1994年にデビューして乗用車感覚のミニバンブームをけん引した「オデッセイ」である。続いた第2弾が、1995年のこの日にデビューした都会派クロスオーバーSUVのCR-Vだ。 ちなみに第3弾は、コンパクトな5ナンバーサイズながら広い室内空間と快適性を実現したコンパクトミニバン「ステップワゴン(1996年~)」、第4弾は車高が高くユーティリティに優れた「S-MX(1996年~)」である。 日常からレジャーまで気軽に使える新感覚SUVのCR-V CR-Vの車名は、Comfortable(快適な)/Runabout(自由に走り回る)/Vehicle(車)のイニシャルを取ってネーミングされた。その開発コンセプトは、セダンのもつ爽快な走りや快適な乗り心地とワゴン並みのスペースユーティリティ、そしてオフローダーの持つ悪路走破性を実現することだった。 日常からレジャーまで気軽に使える乗用車感覚のSUVを目指し、スタイリングは“トレッキングシューズ”をイメージして全体のフォルムを構成。パワートレインは、新開発の最高出力130ps/最大トルク19.0kgmを発揮する2.0L直4 DOHCエンジンと4速ATの組み合わせのみ。駆動方式は、ホンダが独自に開発したデュアルポンプ式のフルタイム4WDが採用された。 車両価格は、標準グレードが198万円。当時の大卒初任給は19.4万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で235万円に相当する。乗用車感覚で扱いやすいCR-Vは、RAV4とともに都会派クロスオーバーSUVという新たなジャンルを開拓して大ヒットした。 オンデマンドのデュアルポンプ式4WD デュアルポンプ式4WDは、ホンダが独自に開発したオンデマンド4WDである。 通常はFFで走行し、発進や加速、雪道や悪路などで前輪が滑りやすい状態を感知すると、フロントポンプとリアポンプに油圧が発生し、湿式多版クラッチを繋いで後輪も駆動し4WDとなる方式である。クラッチ圧着力を調整することで、路面状態や走行状況に応じて最適な駆動力を配分する。 デュアルポンプ式4WDは、湿式多版クラッチを油圧制御(機械的に制御)するので、切り替えレスポンスにやや遅れが発生し、「パッシブ・オンデマンド4WD」と呼ばれ、かつては“なんちゃって4WD”と揶揄されたこともあった。最近は、カップリングや多板クラッチを電子制御する方式が一般的で、機械式よりもレスポンスに優れ「アクティブ・オンデマンド4WD」と呼ばれる。 当然、ホンダの4WDシステムも最近は「リアルタイムAWD」と呼ぶ電子制御方式に進化している。ひとつのポンプをモーターで作動させ、電子制御クラッチで後輪へ素早く駆動力を配分する方式である。 ・・・・・・・・ CR-Vは、2022年8月をもって国内販売を終了した。一方で、北米などの海外市場では現在も販売され、特に米国ではホンダで最も売れているSUVである。ライバルだったRAV4も北米志向で大型化し、日本より北米で人気を獲得するという同じ道を辿っているのだ。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純