ビジネスウオッチに新たな価値観をもたらした名機「オシアナス」誕生20周年の歩みを担当者とともに振り返る
取材後記
2000年代、多くのビジネスマンにとってオシアナスは待望の腕時計だったのかもしれない。質感の高さに見合った10万円程度の価格帯でとにかく見栄えが良く、電波ソーラーのため精度と動作安定性にも優れる。フルメタルだが素材がチタンのため軽くストレスフリーでアレルギーも起こしにくい。実際、筆者もオシアナスを着用しているビジネスマンを街中で何度も見かけたことがある(もちろん目印はオシアナスブルーだ)。その後、このブランドが嚆矢となり、10万円台のソーラー電波クロノグラフは国産ブランドが受信速度や針の迅速駆動などの技術を競い合う時代に突入。その開発競争は、ソーラー発電でのGPS駆動が各社出揃った時点から徐々に収束へと向かうが、そこに至るまでの急速な技術発展のきっかけはオシアナスが作ったもの、と筆者は考えている。
振り返れば、フルメタルでの標準時刻電波受信は難易度が高いと思われていた2000年代初頭にアナログ表示で挑戦し、それを達成。しかもクロノグラフなどの多機能も備えて実用に耐えるサイズに抑えた点は、デジアナモデルとはいえ快挙だ。その後、2005年からはフルアナログの電波ソーラークロノグラフとしてカシオ独自の高密度実装技術と省電力化を追求しながら、毎年のように世界最薄記録を更新。機能面では多局受信「マルチバンド5(のちに6へ進化)」に、リューズを用いた「スマートアクセス」、発電量を安定させる「遮光分散型ソーラーセル」、世界初となる電波受信・GPS・Bluetoothの「3way」など、多くの革新を遂げてきた。いまや最薄モデルの「マンタ」のモジュールは、従来のタフムーブメントに比べて約71%の薄型化を達成。これに使われるカレンダーディスクは、もはやコピー用紙と同等の薄さである。
最新の20周年モデルでは、これまで培ってきた技術を駆使して異なる3パターンの「海の情景」が表現された。こうしたストーリーデザインが、今後の新作の開発ではより重要になってくるのではないだろうか。オシアナスはテクノロジーだけでなく、そこにエレガンスも伴わなければならない。かつて進化のポイントにブルーを配色してきたように、まだ見ぬ新作では時計の魅力をいかに美しく魅せてくれるのか。これから先のオシアナスの展開が楽しみでならない。 ※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。
TEXT/Daisuke Suito(WATCHNAVI) Photo/Ryohei Oizumi