ユニクロと無印良品、ネット売上げ大幅増! それぞれのEC戦略はどう違う?
2020年8月期決算では、ファーストリテイリングの「ユニクロ」、良品計画の「無印良品」ともにネット売り上げが大幅にアップしました。コロナ禍でのステイホームが追い風になっただけでなく、専用アプリの活用や販路の拡大などが奏功したとみられます。アパレルや雑貨を扱う代表的有店舗2社のEC戦略について解説します。
両社ともネット売上高が約3割~4割増
ファーストリテイリングの国内におけるユニクロ事業売上高は 前期比7.6%減の8,068 億円でした。上期は暖冬の影響を受け、下期はコロナにより店舗の多くを臨時休業したことが要因としています。 その一方で、ネット売上高は同29.3%増の1,076億円と3割近く伸び、売り上げ構成比は前期の9.5%から13.3%へと上昇。中でも下期は、前年同期比54.7%増と大幅な伸びを達成しています。下期はデジタル広告やテレビCMでネット通販の情報発信を強化したのに加え、アプリ会員向けの特別価格導入により新規客が増加したことが後押しとなりました。 良品計画は今期決算期を2月から8月に変更したことで、2020年8月期は3月から8月までの6カ月変則決算となりました。このため、増減率についても前年同期との半年間の比較値となっています。 「無印良品」の国内事業売上高は前年同期比8.6%減の1,224億2,800万円と減少したものの、ネット通販売上高は161億8,900万円と37.9%の大幅増になりました。国内全事業売上高に占めるネット販売の構成比も、前年同期の7.0%から11.5%へと上昇しています。 今期は大部分の店舗が休業した状況において、オンラインストアでの販売を強化。キッチン用品や収納用品、食品などの巣ごもり需要関連商材が堅調に推移したといいます。昨年の消費税値上げを機に着手した商品価格値下げ施策を加速させ、ユーザーへのアピール度を高めたことも功を奏したようです。
ユニクロの新たな旗艦2店舗ではバーチャル融合のサービスで攻勢
ユニクロは今年6月、原宿と銀座にリアルとバーチャルを融合させた最新型の店舗を相次ぎオープンしました。話題作りとユーザーサービス向上を目指し、着こなし発見アプリ「スタイルヒント」を活用した専用売り場を設けたのが大きな特徴です。専用売り場では、コーディネート提案やオンライン購入に対応しています。 「スタイルヒント」は昨年秋から提供を始めた自社アプリで、ユーザーやインフルエンサー、モデル、店舗スタッフなどが投稿した画像を閲覧できます。画像認識やレコメンド機能も搭載し、ユーザーが撮影した服や気になる商品画像などをアップすると類似のユニクロ商品や着こなしが提示され、ネットで購入することが可能です。 原宿店と銀座UNIQLO TOKYO店の専用売り場では、ガラスで区切られた壁一面に240台もの着こなしディスプレイが並び、それぞれにアプリから投稿された人気コーディネートが表示されています。気に入ったディスプレイから欲しい商品を見つけてタッチすると、同じ商品か類似商品の店内陳列場所が表示されます。 また、「スタイルヒント」をダウンロードしておけば、売り場のディスプレイ画像に表示されるQRコードをスマートフォンで読み込むとその商品のページが開き、アプリ経由でオンライン注文ができます。 ディスプレイの利用待ちの列ができるほど来店者の人気も高く、その場で「スタイルヒント」をダウンロードして試す人もいるそうです。店舗発信によるアプリの認知度拡大が期待でき、ネット売り上げのさらなる増加にもつながるとみられます。 リアルとバーチャルの連動という施策では、ネット購入した商品を自分が指定したユニクロ店舗で受け取れる送料無料サービスも伸びています。サイト上で手続きすると早ければ2~3日で指定店舗に届き、14日間の取り置きが可能。東京23区内の店舗指定ならばより迅速で、朝10時までに注文すると最短で当日17時以降に商品を受け取ることができます。 最近はネット購入者の半数近くが店舗受け取りを選んでいるそうで、今後はさらに拡大が見込めます。販売チャネルごとに購入金額や購入件数を比べた場合、店舗受け取りは店舗やネットを単体で利用するケースを大幅に上回るといった強みもみられます。