中野真矢が本気インプレッション! TRIUMPH STREET TRIPLE RS
シャープに気持ちよく高回転域まで吹け上がるのに、低回転域からはフレキシブルにトルクを発揮する。この3気筒エンジンはまさに4気筒と2気筒のいいとこ取りだ。そしてそれがハンドリングにもいい影響を与えている。Moto2由来の「扱える」エンジンを搭載するミドルロードスターに元MotoGPライダー中野真矢さんが乗ってみた!
中野真矢
本誌で「トーキンググリッド」と「乗りたいバイクに乗ってみた!」を連載する元MotoGPライダー。全日本ロードレース審査委員長としての顔も持つ。ストリートトリプルRSも気になるバイクだったとのこと。
Moto2エンジンのDNAを抱くミドルロードスター
正直なところ、トライアンフにレースのイメージはあまりなかった。ボンネビルのような正統派クラシックを造る由緒正しいイギリスのブランド、という印象を持っていた。 デイトナ675がスーパースポーツ世界選手権で活躍し始めたあたりから、レースイメージが高まったように思う。そして19年、モト2のエンジンがストリートトリプルRSベースの765cc並列3気筒エンジンになったのだが、僕はちょっと心配していた。非常に扱いやすいエンジンだけに、若手ライダーの練習や勉強になりにくくいのではないか、と思っていたのだ。 いざ始まってみると、それは完全に杞憂だった。エンジンのパワー&トルクアップに伴い、多くのライダーが「しっかり止まり、しっかり開ける走りが求められるようなった」とコメントしていたが、それはそのままモトGPの走り。モト2→モト GPへのステップアップはスムーズに行っているようだ。 ……といった余計な心配をして しまうぐらい、ストリートトリプルRSのエンジンは素直でスムーズだ。「モト2で使われているレーシング エンジンのベース」と聞くと荒々し いキャラクターかと思われるかもしれないが、真逆の印象である。 回転の上昇は非常に滑らかで軽快だ。クランクまわりやフライホイールが軽いエンジンといった印象で、ヒュンヒュンと気持ちよく回ってくれる。 それでいて、低回転域から非常に豊かなトルクを発生する。その出方も穏やかで、スロットルワークに対する反応は自然かつリニアだ。この二面性――4気筒と2気筒のいいとこ取り――は、まさに3気筒の大きなメリットと言えるだろう。 特にミドルクラスゆえの「行き過ぎないパワー」は、ビギナーからベテランまで幅広いスキルのライダーに「右手でエンジンを操る歓び」を味わわせてくれる。 そしてこの排気量はモト2でもうまく作用している。現在モト2マシンにはトラクションコントロールが採用されていないが、ギリギリ扱える範囲に収まっているのがこの765cc並列3気筒なのだと思う。