愛知海苔の復活目指す 商社と生産者、連携本格化
愛知県産海苔の復活を目指す活動が活発になっている。前漁期終了の翌6月から生販の連携を高める会が複数開催され、増産に向けた対策が加速している。 海苔取扱枚数日本一の小淺商事を筆頭に、「てりやき」でおなじみの浜乙女、「ジャバンのり」が好調な永井海苔など、愛知県内に本社を構える海苔商社は多い。 伊勢湾、三河湾に囲まれた愛知では海苔生産が盛んで、最盛期には県内で年間10億枚を生産していた。 しかし、2016年度には3億3840万枚だった生産枚数は、翌17年から5年間で1億枚以上も一気に減少。21~23年は2億枚前後の共販枚数が続いている。 急激な減産の背景にあるのは漁師たちの廃業だ。14年から10年間で海苔を生産する県内の漁業経営体は190から120まで4割近くも減少した。 そうした現状を受けて、愛知県産海苔の復活を目指した動きが活発化している。入札指定商社・生産者らが集まった6月の意見交換会を皮切りに、7月には第1回実務者会議を開催。いずれも初の試みで、9月には同会議の第2回を予定する。 「愛知海苔復活に向けての課題と対策」をテーマに掲げた意見交換会には、商社31社40人と生産者12組合37人に加えて、愛知県水産課や大村知事の関係者、国土交通省、水資源機構からも参加した。
開会にあたり愛知海苔入札指定商組合の久田和彦理事長(永井海苔社長)は「海外産に席巻されるのか、それとも盛り返すのか、国産海苔は瀬戸際にある」との危機意識を表明。 また、鬼崎漁業協同組合の鈴木敏且組合長は「海苔の価格が高いことは生産者のモチベーションになるが、海苔離れが懸念される」との見解を示した。 会で俎上に載せられたのは、海の栄養塩不足、後継者不足、食害などで、いずれも深刻な問題だ。 海の栄養塩不足は、生産量の減少だけでなく色落ちにもつながり、商品価値を毀損する。しかし伊勢湾(三河湾含む)は、東京湾・瀬戸内海とともに、国が窒素・リンの含有量を規制する「第9次総量削減」の対象で、その他の地域よりも厳しい排出基準が定められている。 そこで直近の2年間、三河湾では社会実験として国の基準値まで排出規制を緩和した。その結果、色落ちの抑制や品質の向上、生産量の安定が見られたとして、生産者らから行政側へ「基準緩和を継続してほしい」との強い希望が伝えられた。 後継者不足については、共同乾燥所の運営に成功している鬼崎漁協の組合員から「自分は結婚しておらず子どもがいない。家族経営が前提だった従来のあり方であれば、事業を継続できなかった」との意見が出た。 商社側からは「共同出資して加工会社を作るのはどうか」との意見が提出されたが、設置費用の捻出、設置後の効率的な運用など課題が多い。