海自「潜水艦隊」の過酷な深海3K生活、抱き枕は魚雷!?帰宅したら新妻が…年収にも迫る
あまり国民の目に触れることはないが、潜水艦隊の隊員は「3K(きつい、汚い、危険)」とされる潜水艦内で過酷な任務に取り組んでいる。何しろ、睡眠や入浴もままならない環境なのだ。こうした過酷な労働環境に見合うかは判断が分かれるところだが、隊員たちは“悪くない年収”を手にしている。では、具体的にどの程度なのか。知られざる「潜水艦内での生活」や「年収」について、防衛省出身のジャーナリストが解説する。(安全保障ジャーナリスト、セキュリティコンサルタント 吉永ケンジ) ※本記事は前後編の前編です。潜水艦を駆使した「過酷な訓練・任務」について解説した後編はこちらから ● 「きつい・汚い・危険」… 超過酷な「潜水艦」という職場 「沈黙の艦隊」など、たびたび映画のモチーフにも取り上げられる潜水艦。密閉された艦内で繰り広げられる見えざる敵との戦いは、沈黙と忍耐が要求されるチキンレースだ。 敵と水圧の恐怖の中で生まれる乗組員の葛藤と戦友愛を描く潜水艦映画は、戦争映画とパニック映画の両方の魅力を兼ね備えているといえるだろう。 そして、こんなフィクションのような日常を本当に送っているのが、海上自衛隊(以下「海自」)潜水艦隊の隊員たちだ。 今回は、潜水隊員の知られざる生活について前後編で解説する。前編となる本稿では「潜水艦内での働き方」について語っていこう(具体的な任務について語った後編はこちらから)。 海底で長期間活動する潜水艦内では、睡眠や入浴もままならず、職場環境としては自衛隊の中でも極端な「3K(きつい、汚い、危険)」だとされる。 厳しい環境下で、隊員たちはどんな日々を送っているのか。隊員の「知られざる年収」はどの程度なのか――。防衛省出身の筆者が明らかにする。
● 潜水艦はもはや 男だけの世界ではない まず触れておきたいのが、潜水艦が男だけの世界というのは過去の話だということだ。 広島県呉市にある潜水艦隊隷下の潜水艦教育訓練隊(以下「潜訓」)では海自の潜水艦乗組員を養成しているが、2020年、潜訓に初めて女性自衛官5人が入隊した。 訓練生たちは男女問わず、「専用のマスク(スタンキーフード)をかぶり、潜水艦のハッチから海中に脱出する訓練」など、過酷なトレーニングをこなさねばならない。 それらをクリアし、現在では十数人の女性が潜水艦に乗り込んでいるという。 確かに以前は、プライバシーの確保が難しい潜水艦に女性を乗艦させるか否か議論が繰り返されていた。だが、防衛省が2018年に定めた性別制限撤廃を受けて、女性にも門戸が開かれた。すでに女性自衛官のイージス艦艦長が誕生しているので、20年もたたずに潜水艦艦長も生まれるだろう。 では、潜水艦の艦内生活はどうなっているのか。潜水艦は自衛隊の中でも極端な「3K」なので、決して明るい話ばかりではない。 まず、「きつい」の代表として、3直ワッチが挙げられる。ワッチとは哨戒直(当直)体制を指す。3直ワッチというからには、1日24時間を3直で回すのかというとそうではなく、6時間3直、つまり、航海中は18時間サイクルで生活を送ることになる。 これが数日だったら何とか耐えられるだろうが、情報収集など長期行動は1カ月以上に及ぶ。当直の合間の12時間は単なる休憩時間ではない。この間に潜水艦の運航以外の業務であるメンテナンスや訓練、管理業務を行わなければならないため、18時間のうち睡眠時間4時間未満はザラだという。