幾田りら、“未知の場所”で歩んだキャリアを振り返る 『薬屋のひとりごと』との共通点
1月10日より放送開始となったTVアニメ『薬屋のひとりごと』第2期では、主題歌の「百花繚乱」を幾田りらが手がけている。第1期のアニメシリーズはもちろん、原作小説やコミックスも含めて本作の大ファンだという幾田は、作曲にあたり何を思ったのか。主人公の猫猫に対して共通点を抱き、憧れも感じるという幾田が心境を語った。 【写真】幾田りら、『薬屋のひとりごと』作中ポーズ披露(複数)
幾田りらが“新しい世界”に触れていくなかで感じた猫猫との共通点
――『薬屋のひとりごと』にはどんな印象をお持ちですか? 幾田りら(以下、幾田):実は今回の『薬屋のひとりごと』がソロとして活動してきて初めてのミステリー系のTVアニメ作品なんです。いつもアニメは恋愛系のものばかり観ていたので、様々な事件が次々と巻き起こっていくなかで、主人公の猫猫がどんな難題にも一生懸命に、自力で解決策を企てて果敢に挑戦していく力強さが、すごく素敵だなと感じていました。 ――猫猫に対する印象は、作曲のうえでどんな影響がありましたか? 幾田:曲を書いていくときは、いつも自分とその作品との共通点というか、リンクする部分を探していって、自分事としてもしっかり経験が蓄積されていくように意識しています。今回は、【猫猫がとつぜん後宮という未知の場所に連れてこられて、そこから新しい世界やたくさんの人との関わり合いの中でいろいろな感情に気づいて、たくさんの景色を見て成長していくところ】にとても近いものを感じました。自分がYOASOBIのボーカルikuraとしての活動を始めてから5年が経ったんですが、新しい世界に触れていくなかで、一人で活動していては出会わなかったような難しい問題に対して、何もわからないままとにかく挑戦していくところなどが猫猫と重なり合うなと思って、そこを深掘りしていきながら曲を書いていました。 ――楽曲冒頭の「ゆらゆらり」「はらはらり」などのフレーズの語感が印象的でした。こういう詞も猫猫へのイメージから生まれたのでしょうか? 幾田:無意識的なところなので言葉にするのが難しいんですが、『薬屋のひとりごと』の作品は一通り、原作小説もコミックスも第1期のアニメも全部観させていただいて、全ての世界観に自分が没入したときに音として一番最初に浮かんできたのが、このオノマトペみたいなものでした。後宮という、すごくきらびやかで華やかな世界の中で、いろいろな人の物語が織り重なっていくストーリーなので、それを花に例えて、咲いて散っていく様子などにすごく結びついた情景が浮かんできて。それが「ゆらゆらり」だったり「はらはらり」だったり、そういう音になってメロディと一緒に降りてきたところから出来上がっています。 ――リズムも相まって、サビの「ハっとするほど 鮮やかな世界があるんだと知った」というフレーズにも、そういう雰囲気を感じます。 幾田:ありがとうございます。なんとなく曲のフックになるような箇所を、セクションごとに自分の中で「こういうイメージがいいんじゃないか」と積み上げていったんですけど、サビは本当に歌詞にあるような、発散できるような瞬間が頭に欲しいなというイメージがあって。特に2回目のサビは一回音も全部止めていて、ずっと惹きつけ続けられるようなサウンドやメロディーラインを探して今の形にたどり着きました。あと、自分的にこだわりポイントなんですけど、この2回目のサビの途中で転調するというのが自分の中で初めての試みだったんです。「奇想天外」という歌詞にもあるように、本当にちょっとした先で何が起きるかわからない、予測できない展開みたいな雰囲気を音でも表現したいなと思って、そういうサウンドアプローチもしています。