CMからYouTuberコラボへ。業績絶好調のロコンドとは
2020年は、アパレル業界が新型コロナに大きく揺さぶられた年でした。外出自粛で実店舗が苦戦する一方、EC(インターネット通販)が急速に拡大し、消費のデジタルシフトが進みました。 ロコンドの過去5年間の株価推移を見る 中でも業績を大きく伸ばしたのが、靴を中心にアパレルECを展開するロコンド <3558> です。2021年2月期の通期予想では、売上高を前年比16.6%増の100億円、営業利益では前年の▲8300万円から15億円へと大幅な増益を見込んでいます。 どうやらこの大躍進の背景には、単なるデジタルシフトにとどまらない理由があるようです。
YouTuberコラボで広告費のコスパを劇的に改善
ロコンドは、2019年2月期にはテレビCMを積極的に展開し認知度向上を図っていましたが、2021年2月期には広告費の投下先をテレビからYouTubeへ移行し、ウェブ広告においても費用対効果の管理を徹底的に進めてきました。 電通が毎年公表している『日本の広告費(2019年)』によれば、ネット広告費は2014年から6年連続で2桁増を続けており、2019年にはテレビ広告費を上回る2兆1048億円に達しています。 こうした動きに先駆け、ロコンドは効果的な広告手法を模索していたと思われます。 2020年にはトップクラスの人気YouTuber、ヒカルのプロデュースするブランド「ReZARD」とのコラボアイテムを大ヒットさせたほか、宮迫博之・中田敦彦によるYouTube番組「Win Win Wiiin」の初代スポンサーとなり、番組で着用するスーツを製作・販売。 〈YouTube×自社企画商品〉で認知度と売上げを同時に獲得することに成功し、ECに活路を求める多くの業界や広告業界から注目を浴びたのです。 では、そんなロコンドの事業内容と近年の業績はどのようなものか、確認していきましょう。
ロコンドの主要事業と近年の業績
ロコンドの事業は、「LOCONDO.jp」を旗艦サイトとするファッション通販の「ECモール事業」、自社ECを行いたいアパレル企業にシステム・運営機能を提供する「プラットフォーム事業」、店舗や卸などの「その他事業」の3つから構成されています。最新の決算時点(2020年11月末)では、ECモール事業が売上高の82.5%を占めます。 ECモール事業には受託型と買取型(自社ブランド含む)との2種類がありますが、商品取扱高のおよそ8割が受託型によるものです。受託型ではロコンドが在庫リスクを抱えることはなく、販売手数料が売上となります。 続けて、近年の業績を2018年2月期から2020年2月期までの3年間を追って見ていきましょう。 売上高は39.7億円⇒67.1億円⇒85.8億円と拡大傾向で推移しており、利益面では営業利益3.2億円⇒▲9.8億円⇒▲0.8億円、最終利益は1.8億円⇒▲4.6億円⇒▲2.6億円となっています。 2019年2月期の売上高は、非連結から連結会計への移行を伴っているので、全面的に業績の好調さを表すものではありませんが、テレビCMをはじめ積極的に広告を投じることで会員数の拡大に成功しています。 また、「靴」というアイテムに特化し、“自宅で試着、気軽に返品”できる仕組みを提供している点も差別化に寄与しています。 利益面では2年連続で赤字ですが、これは利益を犠牲にしてでも広告宣伝費を確保する戦略によるもので、業績予想の時点から黒字化を狙っていないため特に問題はありません。ユーザーの拡大を狙うIT企業にはよく見られる戦略です。 直近の業績を見ると、2021年2月期第3四半期は、売上高75.1億円(前年同期比18.2%増)、営業利益11.4億円(前年同期は▲1.9億円)、純利益8.4億円(同▲2.1億円)と増収増益となっています。 第1四半期こそ靴の売上げ減少で前年割れとなったものの、第2四半期以降はYouTubeを活用したマーケティング戦略が奏功し、増収に転じました。一方、利益面では、広告関連費が前年の16.8億円から8.7億円に大きく減少したことが寄与し増益となりました。 テレビCMからYouTubeへと広告予算を移したことで、固定費扱いの広告費=前年度6.1億円は88%減の7600億円にまで大幅削減されましたが、新規会員の獲得数は前年と同じ水準を維持できており、広告の費用対効果をめざましく上げる結果となりました。