休廃業増加を懸念「地域金融機関と連携して地域活性化に取り組む」 商工中金・関根社長 独占インタビュー(後編)
-コロナ禍で起業マインドに影響は?
スタートアップ、スモールビジネスなどの起業に、慎重な姿勢が増えるだろう。商工中金におけるDゾーン(創業等の信用リスクの高い事業者向け)融資は、昨年度1年間で1050件、約380億円あった。コロナ禍の今年度も、3カ月で225件、85億円で、昨年度と比較してもそれなりのペースで推移している。 代表的な業種は、ロボット関連やバイオ関連だ。ただ、全般的な環境でみると、起業しづらい状況にあると思う。金融機関としても現状、支援しにくい状況だ。ベンチャーキャピタルの動き次第のところもあるだろう。
-中小企業がデジタル化を推進するには?
ITリテラシーの部分で、苦手意識がある経営者が相当数いる。例えば、現物の手形を利用している企業も多い。電子債権化を進めてもらうなど、決済等の慣習から変えていく必要がある。業界によっては、手形を回し、資金繰りをつけているところもあるが、時代に合わなくなってきている。手形を電子債権化することで効率化されていく。受発注についても、FAXを使われている企業も結構ある。基本的なものから変革していくべきだ。 商工中金では、地方経済、地域の中核企業の再興を実現するため「商工中金イネーブラー事業」を2019年11月に開始した。その一つとして、IT人材の育成を目的に、組合を通じてITパスポートを取るためのサポートを行っている。ITリテラシーに課題を抱える企業の担当者に、興味を持ってもらうための“きっかけ作り”をしている。今回のコロナ禍でデジタル化が進む可能性ある。面談の機会は必要だと思うが、ずっと対面である必要もない。打ち合わせ程度ならウェブに切り替えられる。Zoomのように動画機能で済ませられるものを対面から切り替えていくなど、できることはアップデートすべきだ。
-与信費用、引当の見通しは?
2020年3月期決算において、引当金を多く計上したリーマン(・ショック)を参考に予防的に厚く計上した。また、2020年3月と比較すると、すでに1兆円以上の貸出金が増えており、今後の決算においては、引当金が増えてくるものと見込んでいる。