「全国学力テスト」成績公表、何が問題になってるの?
文部科学省は、小中学校の「全国学力テスト」の成績を、各区市町村の教育委員会の判断で公表できるよう、実施要領を見直す方向で検討に入ったそうです。これまで文科省は、教育委員会が学校別の成績を公表することを禁じてきました。なぜ公表容認へと議論が進んでいるのか、論点を整理してみましょう。
「序列化や過度の競争」の懸念
全国学力テストとは、小学6年・中学3年を対象にした「全国学力・学習状況調査」のことです。2007年度から全員参加式のテストとして始まり、民主党政権下で3割抽出方式に変更されましたが、2013年には4年ぶりに全員参加式に戻っています。 これまで公表されていたのは都道府県別のデータのみでした。しかし今年9月、静岡県の川勝平太知事が学力テストの科目「小学校国語A」が都道府県別正答率で最低だったことに危機感を持ち、「学力テスト下位100校の校長名を公表する」と発表したのです。学校現場からの反対で「成績上位の校長名を公表する」と方針転換しましたが、これを機に学校別の成績公表の是非をめぐる議論が湧き起こりました。 そもそも学力テストの目的は、その結果を教育現場に生かし、児童生徒の学力向上に役立てることにあります。これまで文科省が学校別の成績公表を禁じてきたのは「学校間の序列化、過度の競争を招く」「学力テスト対策に授業が偏る」などの懸念からでした。
「到達度知るために公表は当然」
しかし、独自の教育改革に取り組む地方自治体から、公表に積極的な意見が出ています。「学習の到達度を知るために、成績は公表して当然」「公表するかしないかは地域の判断に委ねるべき」といったものです。 すでに、自らの判断で学校別の成績を公表している学校もあります。現行の公表ルールは教育委員会による公表を禁じるものですが、各校がホームページなどで自主的に公表することは認められているのです。 市内の全小中学校が自主的に公表した結果をホームページで公開している佐賀県武雄市教委では、点数だけが独り歩きしないように生活状況を尋ねた学習状況調査の結果と合わせて公表しているとのことです(産経ニュース2013年10月21日)。
市町村教委の6割は現状維持望む
10月21日に開かれた文科省の専門家会議によれば、全国の小学校の74%と中学校の67%がすでに、保護者や地域に公表や説明を行っていることが明らかになりました。また、市町村教委による学校別公表に賛成の知事は44%、現状維持が24%。都道府県教委では賛成は40%、現状維持が43%となっています。 その一方で、市町村の教育委員会は現状維持を望む意見が62%と過半数を占めました。学校現場により近い市町村で「過度な競争や序列化を生む」との懸念が根強いことが示され、市町村教委による学校別公表の解禁には反発も予想されます(東京新聞2013年10月21日)。