ザックジャパンの“代名詞” 3バックは試されるのか
しかし、ベトナム戦から約2年半の時間が経過しても、選手たちの中で消化不良は続いている。今年3月のニュージーランド代表戦、先のキプロス代表との壮行試合で「3‐4‐3システム」は試されなかったことと、決して無関係ではないだろう。実戦の中でこそ課題が解消されることを考えれば、ワールドカップ本大会でのオプションとするにはもはや時間切れと言うべきだろう。 元日本代表MFで現在は解説者を務めるも水沼貴史氏は、「選手たちが違和感を抱えながらプレーしている」とザッケローニ監督が導入を目指してきた「3‐4‐3システム」の弊害を指摘する。「選手たちがピッチの上で躍動しなければ、サッカーという競技は絶対に成立しない。その意味で言えば、選手たちが躍動しないシステムにする必要はまったくない。これまでほとんど成功した試しがないのだから、もはやこだわっても仕方がないのではないか。現在のチームは、自分たちがイニシアチブを取るサッカーを4年間にわたって培ってきた。それをワールドカップの舞台でも貫いて、その結果がどう出るかかが今大会のテーマだと思っているので、自分たちのスタイルを徹底することに集中して欲しい」。 慣れ親しんだ「4‐2‐3‐1システム」で、例えば左サイドバックの長友佑都(インテル)を「3」の左サイドに上げれば前へのより推進力を高められる。攻撃陣の中でミドルシュートへの意識と成功率が極めて高い、大久保嘉人(川崎フロンターレ)のワントップを習熟させるのも一手だろう。つまり、現行のシステムを維持したままで攻撃力を高めるオプションは確実に存在するわけだ。「3‐4‐3システム」にこだわれば、二兎を追う者は一兎も得ず、という結果に終わりかねない。自らの哲学と成功体験とを捨て去る決断が、本番を直前に控えたザッケローニ監督に求められることになる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)