ザックジャパンの“代名詞” 3バックは試されるのか
最終ラインが5バック気味となり、攻撃に人数を割けない状況となるのをNGとする理由が垣間見える。最終ライン同様に中盤の「4」もフラットに固定。相手のボール保持者を例えば日本の左サイドに追い込めば、3バックの左、中盤の左、3トップの左が絡んで数的優位が生まれる。そこでボールをできる限り高い位置で奪い、ショートカウンターに転じる。最終ラインに「横ずれ」が求められるのは、中盤の両サイドを常に押し上げた状態にしておく意図も込められている。コンセプトは理解できると、今野はこうも語っていた。「より前から相手にプレッシャーをかけられるし、その結果としてサイドで常に数的優位を作れることもできる。やるべきことをしっかり実践すれば、攻撃のいいオプションになると思う」。 やるべきこととは、3バックの「横ずれ」に他ならない。しかし、横幅68mのピッチを3人だけで守る守備の文化は、イタリアにはあっても残念ながら日本には根づいていない。1対1に強く、スピードも兼ね備えていなければ、逆サイドを大きく空ける守り方は選手たちに常に不安を抱かせてしまう。ザッケローニ監督は「3‐4‐3システム」の要点として、相手にサイドチェンジをさせない意識も徹底させている。しかし、例えば格下のグアテマラ代表と対戦した昨年9月の国際親善試合では、いとも簡単にサイドチェンジのパスを通される場面が幾度となくあった。 ワールドカップのグループリーグで対峙するコートジボワール、ギリシャ、コロンビアが相手なら即ゴールにつながりかねない。完全習得への道はいまだ半ば、最終ラインの3人だけで守るという根本的な部分で逡巡していると、今野も認めざるを得ない。「横ずれがすごく重要なのは分かるんだけど、判断が難しい。サイドに出されたときに全力でアプローチにいくのか、味方のサイドの選手に任せるのかの判断もまだ曖昧なので」。 青写真通りにサイドで数的優位を作り、ボールを奪っても、そこから先の展開において手詰まりとなってしまうことが少なくない。前半限定で「3‐4‐3システム」が試された2011年10月のベトナム代表戦後には、キャプテンのMF長谷部誠(当時ヴォルフスブルク)がこんなコメントを残している。「頭で考えてプレーしていた部分があった。監督に言われたプレーをするのも大事だけど、そこから試合の中でいかにして自分たちで色を付け加えていくか。練習では何度も反復してきたけど、実際の試合になると相手もいる。練習通りにはいかないし、機械的に動いてもどうしようもない。そのへんで、もう少し不真面目になってもいいと思う。すぐにできるシステムにチャレンジしているとは思っていない。時間をかけて完成したものにこそ価値がある。いまは我慢のときですね」