「青森県最強」囲碁棋士、競技生活に幕/古川アマ六段(弘前)、次世代育成へ
青森県最強のアマ囲碁棋士・古川元六段(38)=弘前市=が、2月に出場したプロ棋戦を最後に競技生活に終止符を打った。アマの全国大会で2度準優勝、囲碁の普及活動をしながら県内で負け知らずの実績を誇る一方、プロの夢に破れ、健康不安や両親の死など「何度も『どん底』を味わってきた人生」だったと古川六段。「囲碁の普及活動をできている今が一番幸せ」と話し、活動を続ける先に思い描く夢を語った。 古川六段はこれまで、県内主要タイトル(最強位、名人、王座)をそれぞれ通算10期以上獲得。2015年から20年までに出場した35大会のうち、優勝を逃したのは1回のみで、82連勝を含む132勝3敗という好成績を収めた。14年からは「宙空(おおぞら)囲碁クラブ」を開き、県内各地で囲碁の指導を行っている。 父や伯父が囲碁好きで、幼い頃から自然と碁石を握るようになった。プロを志し、中学1年生の時に単身で上京、日本棋院の院生になるもプロにはなれず、19歳の時に年齢制限で卒業。原因不明の体調不良などから、翌年に囲碁をやめた。 06年、23歳の時、県本部常任理事から打診があり復帰を決意。その後選手として波に乗り始め、ようやく親孝行ができると思っていた直後に母が急逝した。3年後には父が死去し失意の底に沈むも、周りに助けられながら自らを奮い立たせ、県囲碁界を引っ張ってきた。 囲碁の「無期限休養」に入ることを意識し始めたのは昨年。20年近く悩んできた体調不良の原因が、関節リウマチだと判明した。体が不自由になった時に、家族を養っていける仕事は-と考え、株式に関わる仕事を自宅で始めた。選手として費やしていた時間を、新たな仕事のために使うと決断したのだった。「たくさんの方に支えられてきた選手生活で、私の活躍が生きがいだと言ってくれた方もいた。苦渋の決断だった」と顔をゆがめる。 一方で、囲碁の普及活動には引き続き力を注ぐ。まずは、子どもたちが囲碁と触れ合う機会が必要と考え、級位者が楽しめる大会を増やそうと動いている。活動を約7年間続けてきて、普及している実感は「まだまだ」だが、協力してくれる人々がたくさんいるという。将来的には「県内タイトル戦に、10~20代の若者が30人ぐらい参加することを目指したい」と夢を語った。 県囲碁界を次世代につないでいきたいという思いのほかに、子どもたちには「負けても、失敗してもいい」と伝えたいと古川六段は話す。「囲碁を通して、厳しい人生を生き抜くためのヒントを見つけてほしい。もし道に迷ったら、私が支えになってあげたい。私が周りに支えてもらった時のように」