就職氷河期世代が退職を迎えると大変なことになる 政府が放置する「国民年金の給付水準が低すぎる」大問題
2024年度における基礎年金は、月額6万8000円だ(日本年金機構、令和6年4月分からの年金額等について)。 基礎年金の場合は、保険料も定額なので、経済成長率が高くなったところで、保険料収入が増えるわけではない。 財政検証の結果を見ても、保険料収入は、①「高成長実現ケース」と、②「成長型経済移行・継続ケース」で、2040年までほとんど同じだ。そして、基礎年金の所得代替率が、現在の36.2%からさらに下がることが予測されている。
就職氷河期においては、大企業に就職できず、非正規の就業を続けるといった人が多かった。こうした人たちは必ずしも厚生年金には加入していない。それらの人たちの多くは、これまでも十分な額の貯蓄を行っていないし、また退職金も期待できないと思われる。それに加えて公的年金に期待できないのでは、大きな問題だ。 そして、就職氷河期の人々が、これから退職後の時代を迎えることになる。したがってこれに対する措置は、差し迫った課題だ。
基礎年金の給付水準が低いことへの対策として、保険料の納付期間を、現行の40年(20~59歳)から、45年間(20~64歳)に延長する制度改革が提案されていた。 今回の財政検証では、納付期間延長に関するオプション試算が行われている。それによると、期間延長により基礎年金の所得代替率が上昇する。この効果は厚生年金の加入者に対しても及ぶ。具体的にはつぎのとおり。 ■基礎年金の拠出期間延長のオプション試算 基礎年金の拠出期間を延長した場合には、その分だけ給付が増額され、基礎年金が充実する。2024年度の基礎年金額(年81.6万円)をもとに計算すると、年約10万円の給付増となる。
「③過去30年投影ケース」のもとで、厚生年金の2055年の所得代替率は、57.3%と現状維持の場合の50.4%から6.9%ポイントだけ改善する。 ただし、保険料負担も国庫負担も増える。2024年度の国民年金保険料(月約1.7万円)をもとに計算すると、5年間で約100万円の負担増となる。また、国庫負担も増える。 国民年金の支給開始年齢の引き上げは、対象者に大きな利益をもたらす。 国民年金の加入者の場合には、前項のように保険料が100万円増加するのだが、それと引き換えに給付が増加する。20年間受給すれば保険料増加額の2倍だし、30年間受給すれば3倍だ。