訪問診療は何をどこまでしてくれるの? 往診との違いは?
「訪問診療をお願いしたいけれど、どんなことをしてくれるのだろうか」「お願いしたいけれど、断られることはないだろうか」など悩んでいる人も多いのではないでしょうか。社会のニーズに伴い、訪問診療をおこなう医療機関の数は増えています。しかしその一方で、まだ情報が浸透していないのも事実です。一体、訪問診療ではどこまでお願いできるのでしょうか。今回は「しろひげ在宅診療所」の山中先生に教えていただきました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
院内とほぼ同等の治療を受けられる訪問診療
編集部: まず、訪問診療について教えてください。 山中先生: 訪問診療は、自力では通院が困難になった患者さんがご自宅での療養を希望する場合、医師が定期的に患者さんのご自宅に訪問して診療をおこないます。通院が困難になる理由は、身体疾患や精神疾患、家庭環境、認知症など、様々なケースがあります。 編集部: 「定期的に訪問」とのことですが、どれくらいの頻度でお願いできるのですか? 山中先生: 一般的に、訪問診療の回数は月1~4回くらいが目安で、月2回程度が平均ではないかと思います。また、緊急の事態には24時間365日対応しています。 編集部: 重症の人でも、訪問診療を受けられるのですか? 山中先生: もちろん、重症者でも訪問診療を受けることができます。訪問診療では重症や軽症を問いませんし、当院でいうとむしろ重症者の割合が高めです。というのも、そもそも自力では通院が困難になった人が訪問診療を始めるケースが多いので、必然的に重症の患者さんが多くなるのです。 編集部: 重症の人でも、一通りの治療を受けることができるのですか? 山中先生: ある程度の制限はありますが、基本的には院内と同等の治療をご自宅で受けることが可能です。ただし、ご自宅で大がかりな手術をおこなうことはできませんし、MRIのように大きな設備を使った検査をおこなうこともできません。 編集部: 具体的には、どのようなことをお願いできるのですか? 山中先生: 医療機関によって異なりますが、血液検査や尿検査、細菌検査などの検査をおこなったり、在宅酸素や麻酔、人工呼吸器の管理をしたり、疼痛のケアをしたりすることもあります。また、内服薬の処方や指導をしたり、自己注射の指導管理をしたりするほか、末期医療や看取り、介護職との連携、生活指導やご家族へのアドバイスなどもおこないます。このように、訪問診療でできることは様々です。 編集部: 訪問診療は基本的に、院内でおこなう治療と同じことをお願いできるのですね。どの病院でも訪問診療をおこなっているのですか? 山中先生: いいえ。訪問診療は、社会的に「自宅で医療を受けたい」というニーズが高まってきたことにより、近年整ってきた制度です。そのため、まだ全ての病院がそうした体制を備えているわけではありません。また、外来や入院とはまったく異なった対応が求められるため、真の意味で訪問診療を提供している医療機関は、日本でもごくわずかと言えるのではないでしょうか。とくに、24時間365日稼働している医療機関は少ないと思います。