「フィンセン文書」が暴く、資金洗浄で巨額の収入を得ていたメガバンクの実態
膨大な量の政府文書から、欧米のメガバンクが、疑わしい取引に絡む数兆ドル規模の資金移動にどのように関与していたかが、初めて明らかになった。これらの取引は、銀行とその株主に利益をもたらした一方で、テロリストや、国を私物化する政治家、薬物取引組織の重鎮たちの犯罪行為を助長してきた。 アメリカ政府は強大な権限を持つにもかかわらず、これらの資金移動を阻止できていない。
これまで非公表だった「フィンセン文書」。それが暴いた金融機関の不正
「フィンセン(FinCEN)文書」と総称される「不審行為報告書(SAR)」をはじめとする大量のアメリカ政府関連文書。9月20日、このフィンセン文書が未曾有の世界的な金融腐敗と、それを助長する銀行、そして、腐敗が横行する中で手をこまねいている政府機関という構図の全貌を明らかにした。 BuzzFeed Newsはこれらの報告書について、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)および88か国、計100以上にのぼる報道機関とともに調査した。 フィンセン文書は、銀行により作成され、アメリカ政府に共有されてきたが、これまでは非公表だった。今回の文書は、銀行業務の不正防止の仕組みが空洞化していることや、犯罪者たちに容易に悪用されている状況を白日の下にさらしている。 多くの死者を出す麻薬戦争から得られた利益や、発展途上国から横流しされた大量の資金、さらには、出資金詐欺の餌食となった庶民のなけなしの預金などが、金融機関職員からの警告があったにもかかわらず、金融機関の間で公然とやりとりされていたことが判明した。 マネーロンダリング(資金洗浄)は、他の犯罪の温床となる犯罪行為だ。資金洗浄が引き金となって、経済的不平等の加速や公的資金の流出、民主主義の後退、世界各国の政情不安が起きるおそれがある。そして、この犯罪で中心的な役割を果たすのが、銀行などの金融機関だ。 かつてアメリカの大手金融機関のワコビアで不審な取引の調査員を務めていたマーティン・ウッズ氏は、「シワひとつないワイシャツにスマートなスーツを着た一部の銀行員が、世界中で亡くなる人たちの悲劇を食い物にしている」と指摘している。