「核のタブー」を被爆証言を繰り返すことでつくり上げた 全世界の次の世代が記憶の継承を ノーベル平和賞委員長
ノーベル平和賞に日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)を選んだノルウェー・ノーベル委員会のフリードネス委員長が、FNNの単独インタビューに応じた。選考理由について、核兵器の脅威が現実化する中で、被爆者の証言が、核兵器の使用は道義的に認められないという「核のタブー」をつくり上げたこととし、証言を次世代へつなぐ重要性を強調した。 【画像】ノーベル委員長「核のタブー」確立が受賞理由
長年の証言活動が「核のタブー」育む
ノーベル委員会のフリードネス委員長は、FNNの単独インタビューで「ノーベル委員会は、被爆者が何十年にもわたって、すでに亡くなった方も含めて証言活動を続けてきたことを重視している。彼らの多くが何度も被爆体験を語ることで『核のタブー』を作り上げてきた」と選考理由を語った。 そのうえで、ロシアが核の使用をほのめかすなど、その脅威が強まっていること、核兵器の近代化が進んでいることには次のように懸念を示した。 ノーベル委員会・フリードネス委員長: 我々にとって、日本被団協の素晴らしい活動に光をあてるとともに、核兵器が依然として問題で、人類にとって益々問題となっていることを世界に警告することも重要だ。
証言、記憶を全世界で引き継ぐ
さらにこれから待ち受ける“被爆者なき時代”への対応として、フリードネス委員長は証言を全世界で次の世代に引き継ぐ重要性を次のように強調した。 ノーベル委員会・フリードネス委員長: 世界全体がすべき答えは同じだと思う。その答えは、証言を伝えて新しい世代に責任を引き継ぐことだ。被爆者自身がその責任を今後も負うことはできない。私たちのすべての記憶機関(博物館、図書館、アーカイブなど)がこれらの証言を確実に引き継いでいかなければならない。そして、新しい世代、勇気ある声、興味のある学生や教師が、未来のために活動を引き継ぐ必要がある。 また、フリードネス委員長は、被団協の箕牧代表委員から高校生らがつくった銅製の折り鶴を受け取ったことについて、「本当に美しかった。現在、核兵器は私たちの問題であると若い世代も責任を感じているだろう」と、やはり若い世代が核兵器について考えていくことに期待を示した。
「トラウマ」乗り越え証言する重み
今回の受賞理由として、フリードネス委員長は、被爆者たちの長年の証言活動も挙げたが、この背景には委員長自身の経験もあることを明かした。 それは、2011年にノルウェーで発生した銃撃テロ事件で69人が命を落とし、自身もそのトラウマに苦しんだ経験があることだ。「生存者が自身の経験を語ることがどれほど難しいか、私自身も理解している」として、被爆者が過去の苦痛を振り返りながら証言を続けるつらさへの理解を示した。 戦後80年を迎える中、フリードネス委員長が言うように、被爆者の証言や記憶を日本だけでなく、世界的に、次の世代に引き継いでいくために何ができるのかを考えていきたい。 (テレビ新広島)
テレビ新広島