【立田敦子のカンヌ映画祭2024 #02】フランスの#MeToo は映画祭にどう影響する!?
カンヌのホテルに着いた途端、ホテルのレセプションの女性から「今年のカンヌ映画祭は#MeToo 問題で大変ね!」と声をかけられた。「えっ!そうなの?」とちょっと驚いたが、確かに少し前からフランス映画界には#MeToo 運動の第2波が押し寄せているようだ。 有名新聞出身のジャーナリストが立ち上げたニュースサイトでは精力的にこの問題を扱っており、カンヌの開幕日(つまり5月14日)に合わせて10人くらいの映画プロデューサーや監督を告発する記事が掲載されるという噂も流れた。ジャーナリストによっては、その告発記事によってオフィシャルセレクションに入っている監督たちの作品が上映中止などの影響を受けるのではないか、という意見もあった。この噂の波紋は大きく、開幕前日に行われた映画祭の総代表ティエリー・フレモー氏の会見でも、この質問が投げかけられたが、フレモー氏は、「昨年、ご存知のように、私たちはいくつかの論争があり、それを認識したので、今年は、私たち全員がここにいる主な関心が映画であることを確認するために、論争のないフェスティバルを開催することにしました」「だから、他の論争があったとしても、それは私たちには関係ありません」と回答した。"昨年の論争"とは、オープニング作品だったジョニー・デップ主演の『ジャンヌ・デュ・バリー夫人 国王最期の愛人』のマイウェン監督が暴行容疑で訴えられが結局、カンヌは予定どおり上映した件だ。
結局、噂の爆弾告発記事が出ることはなく、いまのところ無事に映画祭は進んでいるようだ。 が、この#MeToo 運動の第2派に対しては、映画祭も慎重に対応を進めているように見える。オープニング翌日の15日には、サイドバーである「ある視点」部門の開会式が開催されたが、その冒頭ではジュディット・ゴドレーシュの短編『Moi Aussi(MeTooの意のフランス語)』が特別上映された。ゴドレーシュは今年2月上旬、14歳で出会ったふたりの映画監督(ジャック・ドワイヨンとブノワ・ジャコ)からの性被害を告発。2月下旬に開催された第49回セザール賞の授賞式でも前触れなく登壇し、被害者に向かって声を上げることと性被害の撲滅を訴えた。