ハイテク株を舐めてはいけない 2021年の市場は「ゴルディロックス」に
コロナ禍の拡大とともにあった2020年は、3月に世界の株価が急落したが、そこから急速にもちなおし、主要株式指数は過去最高を更新する勢いだ。これをけん引したのが、米国のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン(GAFA)に代表されるハイテク株となる。 【グラフ】2021年、経済(GDP)は急速に回復する見込みだ しかし2021年はどう動くのか。三井住友DSアセットマネジメントの石山仁チーフストラテジストは、「IT株の評価額が高すぎると考える人もいるが、そこには新しい需要が生まれ始めていて、ITセクターがけん引して新しい付加価値を生む。ハイテク株を舐めてはいけない」と話す。
2021年は「構造調整の年」に
21年はコロナ禍で落ち込んだ世界経済の回復が本格化すると見られている。三井住友DSの予測によると、20年の経済成長率はマイナス3.9%。これが21年にはプラス6.1%と急回復する。 これは世界経済の潜在成長率といわれる3.5%を大きく上回っているが、コロナ禍で促進されたIT活用、いわゆる企業のDXや、消費者の行動変化が大きく影響している。需要がITセクターに移るとともに、労働力の移動も発生すると石山氏は見る。この構造調整には3年ほどかかると想定しており、ハイテク株の強さは継続するという考えだ。 「ITセクターへ人の動きもともなう構造調整が始まる。その一歩が21年だ」(以下、括弧内は石山氏)
貯まったマネーは、株に向かうか消費に向かうか
ハイテクの強さとともに、21年の世界市場はいわゆる“ゴルディロックス”、適温相場になると見る。ゴルディロックスを見込む理由の1つは、先のITセクターでの構造調整だ。2つめには低金利を挙げる。 「物価が上がらない状況の中では、(中央銀行は)低金利を維持しなくてはいけない。低金利に最も恩恵を受けるのはハイテク株」 3つめには、コロナ対策の補助金や給付金などによる過剰流動性だ。現金と預金を合わせたいわゆる「M1」は、これまでの歴史でなかったほどに積み上がった。企業や個人の銀行口座には、かつてないほどのお金が入っている状況だ。 「行き場のないM1(マネー)がたまっている。このお金を株式に投資するのか、モノを買うのか。消費が本格的に戻らないのであれば、このお金は株式に流れるのではないか」 ただし、21年の後半は不透明だ。4〜6月のタイミングで、世界経済の回復や、ワクチンの浸透など市場の牽引材料が出尽くす見込み。「好材料が出尽くすのが4〜6月の時期だとすると、お金は1〜3月に動く。1月にはIMFが新しい見通しを出すなど、カタリスト(触媒)が集まりやすい局面にある」からだ。