「規模ありき」で止められないバラマキ 補正予算案に14兆円 財政健全化に逆行
29日に閣議決定された政府の令和6年度一般会計補正予算案は14兆円に迫る規模となった。財務省は「歳出構造の平時化」を目指しているが、新型コロナウイルス禍で定着したバラマキを止められずにいる。財源の多くは国債の発行でまかなう方針で、財政健全化の流れに逆行している。 【イラストで解説】政府・与党「年収の壁」見直しで年収2400万円超の基礎控除廃止・縮小を検討 補正予算額13兆9433億円は従来と比べ大きく膨張している。新型コロナ禍の2~4年度こそ数十兆円規模の補正予算が編成されたが、それ以前は毎年1兆~5兆円程度に収まっていた。政府は6年の経済財政運営の指針「骨太の方針」に、コロナ禍以降に膨らんだ歳出を「平時に戻す」と明記したが、かけ声倒れとなっている。 予算の使途についても、物価高克服のための対症療法的な項目が並ぶほか、従来の補助金の付け替えや延長が目立つ。詳細を示さず大枠のみを書き込んでいる項目も多い。 地方への分配を重視する石破茂首相が衆院選期間中の10月の段階で、補正予算を昨年を上回る規模にすると明言したことで「規模ありき」となった感は否定できない。 補正予算の肥大化が続いていることについて、SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「財政健全化をアピールするため当初予算の規模を抑える一方、補正予算を『第2の財布』として扱っている」と指摘する。 政府は7年度に国・地方の財政の健全性を示す基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を黒字にする目標を掲げている。ただ、6年度補正予算の執行が7年度にずれ込む可能性は高く、その達成も困難になったと宮前氏は分析する。 日銀が大規模金融緩和から脱したことにも留意する必要がある。金利上昇局面に入り、財源となる国債の利払い費が膨らむ。徹底した歳出改革を先送りする余裕は、もはや残されていない。(根本和哉)