Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

新型コロナパンデミックの原因は「人類が森林を破壊したからだ」

配信

ニューズウィーク日本版

86歳の霊長類学者が語る、野生生物保護と新型コロナ危機

霊長類学者で野生生物保護活動家のジェーン・グドールの名前を聞くと、チンパンジーの保護活動が思い浮かぶ人も多いだろう。しかし、これまで60年にわたって彼女が取り組んできた活動は、それだけにとどまらない。 86歳の現在も、世界を変えたいという不屈の精神に突き動かされて、年間300日も世界中を飛び回っている。地域コミュニティーや若い世代、さらには環境保護運動で「悪者」扱いされることの多い石油会社も励ますことにより、その目標を達成することを目指している。 祖国イギリスを離れて、タンザニアのジャングルに向かったのは26歳の時。女性が1人でジャングルに入るべきではないと思われていた時代のことだ。 この最初の調査で、グドールは当時の常識を覆す発見をした。チンパンジーがアリを捕るために道具を使っていることを明らかにしたのだ。道具の使用は人間固有の能力だと、それまで思われていた。 4月には、彼女の活動を追った新作ドキュメンタリー番組『ジェーンのきぼう』が放映された。このドキュメンタリーについて、そして新型コロナウイルス危機について、ジャーナリストのキャスリーン・レリハンがグドールに聞いた。 ――あなたは『ジェーンのきぼう』で、森林と野生生物を守るカギは地域コミュニティーに力を持たせることだと指摘している。 森林が外国企業によって破壊されてきたことは確かだが、問題はそれだけではない。人口が増加するのに伴い、地元の人々が農業のために、森林を切り開いている面もある。 真に貧しくて家族を養うのに必死な人は、最後の1本の木でも切り倒さざるを得ない。そこで、人々が環境を破壊せずに生きていける方法を提供することが重要になる。 ――『ジェーンのきぼう』では、コンゴ共和国にチンパンジーの保護施設を造る際に石油会社と協力するに至った経緯についても語っている。なぜ、石油会社と協力すべきだと思うのか。 あらゆる石油会社と協力できるとは期待していない。そのとき協力したのは、コノコ社(現在のコノコフィリップス社)だった。コノコは、私が知っている中で最も環境に優しい石油会社だった。 コノコの資金を受け取るべきなのか。私は自分に問い掛けた。私は旅行に行くとき、石油会社の製品を利用する。自動車に乗るし、飛行機にも乗る。ホテルにも泊まる。石油会社が正しい行動を取ろうとしているのに、資金を受け取らないのは、矛盾した態度だと思った。それにより、石油会社がいくらか評判を高めるのを手伝うのは、悪いことではないと考えた。 ――「新型コロナウイルスの感染拡大は、人類が自然と動物を軽視した結果だ」と、最近あなたは言っている。具体的にはどういうことか。 人類が森林を破壊し続けてきたために、さまざまな種の動物が密になって生きざるを得なくなり、異なる種の動物の間でウイルスが広がりやすくなった。(森林破壊により)人間と動物が近い場所で生きることも増えた。それにより、ウイルスが人間にも広がりやすくなってしまった。 今回のような感染症の危険はずっと前から指摘されていたのに、人間は警告に耳を傾けなかった。SARS(重症急性呼吸器症候群)の経験から全く学んでいない。 ――新型コロナウイルスの経験を経て、人類は何を学ぶべきだと思うか。 今回の問題でせめてもの朗報は、多くの人が初めてきれいな空気を吸ったことだと思う。一部の大企業が事業を停止したことで、インドのムンバイや中国の北京のような都市でも空気がきれいになった。 これまでのやり方を改めるよう、企業や政府に求める大きなうねりが起きてほしい。ただし、企業が失った収益を埋め合わせようとして、以前にも増して猛烈に事業活動を推進し始める心配もある。 この問題はとても難しい。経済活動が止まったことで職を失い、苦しんでいる人が大勢いる。バランスを取りつつ、新しいやり方を見いだしていく必要がある。 ――これまでの活動を通じてのちに残したいメッセージを1つ挙げるとすれば? 一番覚えておいてほしいのは、私たち一人一人が毎日、地球に影響を及ぼしているということ。ものを買うときには、倫理的な選択をしてほしい。その商品はどのように作られたのか。環境に害を及ぼしていないか。動物に残酷ではないか。子供を奴隷のように働かせていないか。 一人一人の姿勢が問われている。あなたには果たすべき役割がある。あなたは自分の行動で世界を変えることができる。

ニューズウィーク日本版編集部

【関連記事】