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「選手交代5人制」に物申す!フットボールの魅力を損なう可能性が…【元マドリー指揮官のコラム】

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SOCCER DIGEST Web

「シンプルだからこそ人気を博してきた」

 フットボールは万人のものだ。プラグマティック派もロマンティック派も、感覚派も理論派も、パスサッカー好きの人間も堅守速攻好きの人間も関係ない。フットボールの持つ独特のパッションが、言語、人種、文化を超えて世界中の人々を魅了してきた。 【PHOTO】時代を彩った名作がずらり! 英BBCが選出した“象徴的な歴代ユニホーム”TOP20の全デザインを公開!  そのフットボールの発展に大きく寄与してきたのがルールのシンプルさだ。フットボールには明文化する必要がないほどの確固としたルールブックが存在する。1925年にオフサイドが導入されて以来、世界共通のルールというものが暗黙裡に形成されてきた。  その間にいくつかのルールが追加、変更されたことはあったが、フットボールの精神に反するプレーを取り締まるため、プレーのダイナミズムを推進するためなどのちゃんとした理由があった。前者は1970年のイエローカード、レッドカードの導入、後者は1992年のGKへのバックパス禁止が相当する。  しかしその風向きが完全に変わってしまったようだ。大きなきっかけとなったのはVARの導入だったが、コロナ禍の中で新たに憂慮すべき事態が起きた。交代枠の最大数が3人から5人(延長の場合は6人)へと拡大されたのだ。  もちろんその背景に特殊な事情があるのは理解している。未曽有の危機には特別なルールが必要ではある。しかしわたしにはその決断を急ぎ過ぎているように感じてならない。    わたしが何より危惧するのは、ルールを頻繁に変えることでファンを混乱させてしまうかもしれないことだ。繰り返すが、フットボールは万人のものだ。しかしすでにそれだけの魅力を持ち合わせているにもかかわらず、特定の人間が深く議論せずに現在の状況に流されるままルールを変えてしまっている現実がある。彼らのその確信は、一体どこから生まれているのだろうか。  フットボールは長きにわたってルールが固定化されてきた。その競技のシンプルさこそがプレーする側にとっても、観戦する側にとっても人気を博してきた大きな要因だ。そこから派生したプリミティブな要素はこのスポーツに独特の魅力を与えており、必要もないのに真新しい要素を持ち込む必要はどこにもない。  そしてその原点さえ保っていれば、選手たちのタレントが奇跡を呼び起こし、ディエゴ・マラドーナのような神格化されるスーパースターも出てくるのだ。  フットボールが競技化されて以来、数多くのアイドル、英雄、レジェンドが誕生してきた。彼らをそのステータスにまで押し上げたのは、ファンの力である。しかし一連のフットボールの改革(いや、改悪というべきか)において、その主役であるはずのファンは発言する機会が全くといっていいほど与えられていない。  危険なモデルチェンジが、綿々と受け継がれてきたこのスポーツの持つ良さまで失わせてしまってはまさに本末転倒である。 文●ホルヘ・バルダーノ 翻訳:下村正幸 【著者プロフィール】 ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。 ※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。

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