菊地凛子、磯村勇斗らは「インティマシー・コーディネーター」をどう思う?女性を取りまく映像業界の今と未来
グローバル・ラグジュアリー・グループのケリングによる「ウーマン・イン・モーション」トークが、11月1日(金)の第37回東京国際映画祭で開催された。俳優の菊地凛子、磯村勇斗、Netflixプロデューサーの岡野真紀子が登壇し、映像業界における、女性を取り巻く環境やさまざまな課題について、熱いトークセッションを展開した 「ウーマン・イン・モーション」に登壇した菊地凛子、磯村勇斗ら(写真)
映像業界では2017年に始まった#MeToo 運動以降、さまざまな改革が行われてきたという。日本映画のみならず、『バベル』や『パシフィック・リム』といったハリウッド映画など海外での現場経験も豊富な菊地は、日本の映像業界においても、環境が少しずつ変わってきたと感じる一方、立場や男女関係なく平等に働ける環境が整うには、まだまだ課題が残ると述べた。 「出産や子育て、介護の問題など、人生の局面でキャリアがストップした時に(仕事に)戻ってくるためにはどうしたらいいのか。映像業界に限らず、そういった意識を持って会話をしていく必要があると思っています」(菊地)
意欲的な作品に次々と出演する磯村は、最近は女性スタッフの数が増え、過半数を占める現場もあると紹介。だからこそ、ハラスメントの問題や、女性が働きやすい環境の実現に向けて、「女性だけで解決できる問題ではないと思う。性別関係なく、男性も一緒に問題に向き合い、まずは理解をしていくことが大事」(磯村)と菊池と同じく、皆が問題意識を持ち、話し合うことの重要性を強調した。 Netflixのエグゼクティブプロデューサーとして日本発のオリジナル作品を多数手掛けてきた岡野も「女性だけで改革できるものではない」と同意。「クリエイティブ面、現場のサポート面でも、男性のプロデューサーに意見を求めたり、お互いの強み、弱みをサポートし合うことが重要」と話し、自身も、性別、年齢に関係なく互いにリスペクトを持ちながら、協力体制を組める健全な環境づくりに励んでいると話す。また、物語や作品自体の多様性が求められる時代においては、作り手の多様性も必要だと岡野。実際にNetflix では積極的に女性監督やスタッフを起用しており、それが力強い物語を作り上げる秘訣にもなっているようだ。 さらに、近年の映像業界で導入が進む、インティマシー・コーディネーターの存在にも言及。インティマシー・コーディネーターとは、映画やテレビの撮影現場で、ラブシーンなどのセンシティブなシーンがある場合、俳優と監督・プロデューサーの間に入る仲介役のこと。日本ではNetflixが初めて登用し、菊地と磯村も、インティマシー・コーディネーターのいる現場に携わったことがあるという。 「いてくださった方が、絶対にやりやすい。それは相手を守るためでもあるし、自分を守るため、クルーを守るためでもある。 そういう立場の人がいて、『大丈夫ですか。何かありませんか』と聞いてくれることで、心が軽くなる。根性で行けます!ということでは、絶対にないので。(インティマシー・シーンを)きちんとデリケートなこととして捉える方がいるのは、とても必要なことだと思います」(菊地) 「インティマシー・コーディネーターさんを入れていただくと、不安ごとがどんどん減っていく。細かいところまで寄り添って、話をしてくださる。安心してシーンに臨める。今、日本には女性の方しかいらっしゃらないのでは?男性のインティマシー・コーディネーターの方がいてもいいなと思う」(磯村) 男性のインティマシー・コーディネーターを希望した磯村に、「早速、会社で話してみたいと思います」と応じた岡野は、「10年後、20年後にこの業界に入るみなさんはどうなるんだろうと未来を意識した上で、お互いを知って、サポート体制を考えていくことが重要」と述べ、それぞれが問題を知り、立ち上がり、助け合っていくことが豊かな映像業界の未来へとつながると締めくくった。 女性が働きやすい環境づくり、作品づくりにおける多様性のあり方や新たな取り組みなど、活発な議論が繰り広げられた今回の「ウーマン・イン・モーション」トークの様子は、以下の動画から、一部視聴することができる。登壇者陣の熱いトークセッションに耳を傾けながら、映像業界を含め、社会全体で向き合うべき、女性を取り巻くさまざまな問題や課題について、今一度考えてみてほしい。 BY EMI ARITA