【特集】信州は『とうがらし王国』 環境が育んだ食文化の“名脇役” 在来品種15種類 「辛みの向こう」味わって
特集は、ピリッと辛いトウガラシです。長野県内には、確認されているだけで在来のトウガラシが15品種あります。一つの県にこれほど多くの在来品種があるのは珍しく、研究者も信州は「とうがらし王国」と呼んでいます。その背景や魅力を取材しました。 真っ赤に色づき、見るからに辛そうなトウガラシ。大鹿村の「大鹿唐辛子」です。先月31日、生産組合の農家が収穫に精を出していました。
大鹿唐辛子は、昭和30年代ころから村内で栽培されてきた在来品種で、「信州の伝統野菜」に選定されています。辛味の中にうま味や甘みがあるのが特徴です。 記者: 「いただいてみます。あー辛い。辛い。口に入れた瞬間から来ますね。でも、噛んでいると中にほんのり甘みも感じて不思議な感じがします」 大鹿唐辛子生産組合・多田周司組合長: 「(辛さの中でも)甘いのが大鹿唐辛子の特徴」 県内には、伝統的に栽培されているトウガラシが数多くあります。
「ぼたんこしょう」は中野市豊田地区が原産。果肉は厚く、抑えられた辛味の中に豊かなうま味があります。北信濃の伝統食「やたら」にはなくてはならない食材です。 上を向いで実ることから名付けられた「そら南蛮」は、小諸市耳取地区の原産。辛味がなく、丸焼きや煮物にして食べられています。 他にも、栄村の「ししこしょう」、阿南町の「鈴ヶ沢南蛮」など、県内には確認されているだけで15の在来品種があります。
信州大学農学部・松島憲一准教授: 「一つの県でこれだけの在来品種があるというのは長野県だけ。『とうがらし王国』と言っていいのではないでしょうか」 信州大学の松島憲一准教授は、トウガラシ研究の第一人者です。世界中のトウガラシを研究してまとめた著書があり、大学のほ場では世界各国のトウガラシを栽培しています。 もちろん、県内の在来品種も。こちらは、伊那市高遠町の「芝平なんばん」です。 信州大学農学部・松島憲一准教授: 「辛いことは辛いです。辛み以外の『辛みの向こう』の味と言うんですけど、甘みとかうま味もあって非常にいいトウガラシ」