コロナ禍、子育て女性に負担集中 休業高止まり、求職活動断念も
そうではない。日本では、バブル経済が崩壊するまで、主たる世帯の稼ぎ手は男性で、女性は家事育児を担う代わりに、働いたとしても「おこづかい程度」と見なされていた。ただ男性の生涯賃金は1997年ごろがピークで、その後2割も減っている。一方、世帯所得はそれほど減っていない。女性の収入が穴埋めしているということだ。 妻の収入は子どもの教育費や住宅ローン返済など家計の中で重要度を増している。妻の休業で収入が減れば、世帯の家計が余裕をなくしたり、生活困難に陥ったりする可能性がある。単身女性やシングルマザーだけの問題ではない。 ーコロナ禍ではテレワークが広がり、定着すれば女性も働きやすくなると期待された。 男性は5月最終週、7月最終週ともにテレワークをした人の割合がコロナ前より高かった。だが、女性は7月最終週にはコロナ前とほぼ変わらない割合に戻っていた。女性の就業先が飲食業や小売業といったテレワークが難しい仕事の人が多かったためとみている。
ーコロナ禍で見えた女性の雇用課題にどう取り組むべきか。 コロナ前には非正規労働者の正社員登用など雇用の質や安定性を高める動きがみられた。これらが後退してしまった印象だ。雇用の質を上げて男性か女性かを問わず労働市場で能力を発揮できるようにすることは、国内総生産(GDP)向上にもつながる。政府は、長期的な視点で正規就業や継続就業を高めるよう取り組み続けるべきだ。 × × × しゅう・えんび 中国・湖南省生まれ。専門は労働経済学 、社会保障論。労働政策研究・研修機構(JILPT)主任研究員。