立場弱い女性 コロナが直撃 ひとり親「毎日綱渡り」… DV、性暴力も県内相談増加
収束の兆しの見えないコロナ禍が、職場や家庭で立場の弱い女性たちを直撃している。ひとり親世帯の女性は「毎日が綱渡り」と苦しさを吐露する。ドメスティックバイオレンス(DV)の相談もじわじわと増加。専門家は「長期化で深刻になることが心配だ」と指摘する。物心両面の継続的な支援が求められる。 【写真】【関連表】鹿児島県内のDV相談件数
「先が見えないことがつらい」。鹿児島市の看護師の女性(44)はため息をつく。小学生から高校生まで3人の子どもを育て、同居する90代の祖母の介護もする。 職場はコロナ専門病院ではないが、発熱した患者もくるため、感染防止のシールドやマスク、防護服で対応している。「いつ自分が感染するか」と不安を抱えながらの仕事は、心理的な負担が大きい。少しでもリスクを抑えるため、休憩はマイカーの中でとる。 認知症を患う祖母の介護はデイサービスやショートステイを利用して切り抜けているが、祖母が通う施設でコロナが発生した場合、自宅介護しなくてはならない。心配は尽きないが、「それでも頑張って家族も患者さんもしっかり守っていきたい」と話す。 小学生2人を育てる母親(45)は昨年5月、できるだけコロナ感染のリスクを減らそうと、飲食店のパートを辞めた。長男は障害があり特別支援学校に通う。「絶対に自分が感染するわけにいかない」と考えたためだ。
長男は下校後、放課後等デイサービスに通う。これまでも施設でPCR検査対象者が出ると、結果が判明するまで休園になったことがある。「言葉も危険性も十分に理解できない息子は、簡単に預けられない。早く仕事をしたいが、今は難しい」 養育費と児童扶養手当などで暮らす。政府の給付金などもあり、何とかしのいできた。実母や友人、教師らに悩みを相談できていることが救いという。「子どもの笑顔を支えに、今は明るいことを考えるようにしたい」と前向きに話す。 県男女共同参画審議会会長のたもつゆかりさんは「災害など非常時には苦しむ女性が増える。コロナ禍が長引き深刻化するのが心配だ」と指摘する。 【ひとり親世帯の貧困】厚生労働省の2019年の国民生活基礎調査では、18年時点で、平均的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合を示す「子どもの貧困率」は13.5%。大人1人で子どもを育てる母子世帯などでは48.1%に達した。19年6月現在で全国の母子世帯は推計64万4千世帯、父子世帯は同7万6千世帯。新型コロナウイルス感染拡大で生活がさらに苦しくなった世帯が多く、政府は低所得のひとり親世帯に最低5万円の臨時給付金を支給した。