大学生「前向き休学」増加中、新卒を担保したまま留学や起業し就活有利に…「メリットしかない」
起業や留学を理由に、大学を休学する学生が増えている。文部科学省の2023年度調査では「就職・起業」を理由にした休学は4年前の1・4倍になり、「留学」は経済事情などを抑えて初めてトップになった。就職に有利な「新卒」という条件を担保したまま、将来のためにキャンパス外での経験を積み自分の能力を伸ばす戦略として選ばれているようだ。(新井清美) 【ランキング】最近の学生が「休学」する理由
◆学生という“看板”
「本格的に事業を運営する力はまだないが、学生という“看板”を使える。うまくいかなければ、新卒として就職活動をすればいい。休学にはメリットしかない」
関西大社会安全学部(大阪府高槻市)の平井登威(とおい)さん(23)は、昨春から休学し、自身で設立した精神疾患の本人や家族へのサポートを提供するNPO法人「CoCoTELI(ココテリ)」の理事長を務めている。4年前から学生団体として手掛けてきた活動で、休学は、それを法人化して軌道に乗せるためだった。
平井さん自身も、親のうつ病を経験。家具やガラスを壊す暴力もあり、毎日機嫌をうかがいながら過ごした。幼い時は病気のことを知らされておらず、「怖いし嫌だけど、それが日常だから仕方ない」と感じ、周囲にも語れなかった。
学生団体として活動を始めたのは、静岡県の実家を離れて関大に入学した2020年の冬、SNSで似た経験をした人と知り合ったのがきっかけだ。初めて自身の経験を明かすと、心がほぐれた一方、精神疾患の患者家族へのケアがほとんどないと気づいた。
ココテリでは、患者家族の居場所づくりとして、オンラインで話をしたり、相談したりできる場を提供している。休学期間は来春までの2年間。相談が無料のため、収入は継続的な寄付集めが必要といった課題も残るが、平井さんは「最も大変な創業時に専念できた。事業運営の基本を理解でき、復学後も続けていける土台ができた」と強調する。
◆留学初のトップ
平井さんのように、積極的な理由で休学を活用する学生は少なくない。