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内海桂子師匠の遺した言葉「舞台に立つ芸人としてみっともない姿は見せられない」

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婦人公論.jp

8月22日、漫才協会名誉会長の内海桂子さんが、都内の病院で多臓器不全のため亡くなられました。享年97。『婦人公論』は内海さんに何度もインタビューする機会をいただきました。その中から、2014年、91歳の時の記事を配信します。(構成=福永妙子 撮影=本社写真部) 【写真】大腿骨骨折の危機を乗り越えられた理由は * * * * * * * ◆親子に近い夫婦関係 このあいだ、うちの亭主と近所を歩いていたら、犬の散歩をさせてるオバさんから声が掛かったんです。亭主が「娘さんですよ」と言うの。「えーっ」と思いましたよ。 わが子なんだけど、帽子をかぶっていたこともあり、ずいぶん老けて見えるから娘だと気づかなかった。動きなんか、私のほうがシャキシャキしてるくらいだもの。でも考えてみれば、娘も68歳ですからね。親の私が91歳ともなれば、世間的には「老老介護」の年まわりですよ。 私には子どもが2人いましたが、長男は18年前に亡くなり、今は娘だけ。その娘は近くに住んではいるものの、うちにはあまり来ません。私が今の亭主と暮らすようになって、やっぱり遠慮があるみたいでね。母親のことは亭主にまかせた、と思っているのかもしれない。それに、私がまずまず元気でやってるものだから、安心もしているのでしょう。 だから、世間では子が親の心配をして気をもむそうだけど、うちの場合は違う。「子どもが」というより、亭主が年上女房のことを心配して気をもむパターンかしらね。亭主は娘と同い年の68歳だから、私とは、まさに“親子”です。もしかしたらうちの夫婦関係は、世間様の親子関係に読み替えてもらってもいいかもしれないね。 24歳年下の亭主とは私が68歳のときから同居、その10年後に入籍しました。当時だって結構な年ですが、今じゃ91歳です。だから気づかってくれているのか、亭主にはあれこれ言われます。外から帰れば、やれ、「うがいをしてください」「しっかり手を洗って」。とどめに「くれぐれも肺炎には気をつけてくださいよ」とかね。 私は健康一番と思うタチではないから、いちいち言われると、「うるさいわね」と思ってしまう。心配して言ってくれているのはもちろん承知だけど、ついムッとした顔にもなっちゃうのよ。 私は都々逸が好きで、自分が感じたこと、世間の面白いことを題材に、よくつくるのですが、88歳のときはこう詠みました。  酒は一合、ご飯は二膳、  夜中に三回お手洗い それが90歳になったら、  酒は一合、ご飯は二膳、  夜中に四、五回お手洗い お手洗いの回数が増えちゃった(笑)。でも、お酒に関しては、うちの亭主、毎晩の晩酌を一合以上はくれないんです。以前は、酒瓶を黙って置いて、適当に飲ませてくれていたのが、今は一合注いだら酒瓶をしまっちゃう。これもおせっかいですよ。好きなだけ飲ませてくれりゃいいのにね。 そのくせ、歩くときは私を置いて、さっさと前を行くんですよ。足腰のトレーニングのために家の前を散歩するのですが、前を歩く亭主が言うんです。「早く追いついて」と。負けると相手になめられると思うから、私も必死に追いかけます。 でも、背後から自転車なんかが来るとさっと手を引っ張ってかばってくれる。やっぱり気を配ってくれてるんでしょう。そりゃ、助かっているし、安心だけれど、私が甘ったれているように見えるじゃないですか。それも悔しいんですよ。

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