杉原千畝のリスト、ユネスコ「世界の記憶」登録を審査
日韓関係をめぐる「影」どう判断
今回の審査案件の中には、日本関連として「朝鮮通信使に関する記録」もある。これは、日本の候補として申請された2件とは別に日韓の団体が国をまたいで共同申請したもの。申請は韓国側の釜山文化財団と日本側のNPO法人、朝鮮通信使縁地連絡協議会によって共同で行われた。縁地連絡協議会には対馬市や静岡市、下関市や日光市など朝鮮通信使とゆかりのある19自治体が参加している。 申請された記録は漢詩など111件333点にのぼるが、うち1件の点数としては最も多い48点を所蔵するのは静岡県静岡市の清見寺。静岡市では徳川家康による日韓平和友好の象徴として朝鮮通信使を小学校の歴史教育でも取り上げるなどしており、「世界の記憶」登録への関心も強い。清見寺のある静岡市興津地区では毎秋、朝鮮通信使再現行列が行われており関係者は、審査の行方に注目している。 日韓をめぐっては、今回、韓国など8カ国の市民団体などにより申請された「旧日本軍の慰安婦に関する資料」についても審査が行われることから、ユネスコがいわゆる従軍慰安婦問題にかかる申請にどのような判断をするのか、注目されている。 ユネスコは先に開いた執行委員会で、異なる意見がある場合、当事者同士が協議する制度を導入することを決定したが、適用は次回からのため、今回の審査では登録の可否を決定するものとみられる。日本政府は、2015年に「南京大虐殺文書」が登録されたことから、ユネスコに審査の公平性を強く求めてきた。 それだけに今回の従軍慰安婦関連の申請に対するITCの審査を注意深く見守っている。外務省国際文化協力室は「ユネスコの執行委員会の決議では、政治的利用や政治的対立を避けることを要請しており、今回の審査について十分注視している」と話している。