「今治造船×JMU」連合発足!中・韓勢と生き残りをかけた受注競争に挑む
造船業界で国も後押しする再編が始まった。国内首位の今治造船(愛媛県今治市)と同2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市西区)が出資する新会社が1月に始動し、中国、韓国勢との生き残りをかけた受注競争に挑む。新造船の需要が低迷する状況で、国は再編に踏み出す造船会社に金融支援などのスキームを設ける。業界内に協業や提携が広がる可能性があり、地方の雇用を生む造船所のあり方も見直す必要がある。 韓国政府の民間救済、「国家レベルで日本の造船業を守ってもらうしかない」
営業・設計、新会社に統合
専業の今治造船と重工系のJMUの資本業務提携は、窮地の日本勢の挽回に向けた試金石だ。今治造がJMUに3割出資するのに加え、両社の商船の営業と設計を統合した新会社「日本シップヤード」(東京都千代田区)を1日付で設立。同社の前田明徳社長が6日会見し、「日本の造船業を引っ張るとともに、日本で造船を続けていく」と述べた。 約510人の体制で今治造とJMUがそれぞれ持つ強みを生かしながら補完し合うビジネスモデルを目指す。両社で得意とする顧客は異なるという。公的支援を背景に造船市場を席巻する中韓勢に対抗し、大規模発注(ロット発注)への対応を重視する。 今後は温室効果ガスを排出しない船舶「ゼロエミッション船」の実用化も焦点の一つ。すでに今治造は伊藤忠商事や三井E&Sマシナリー(東京都中央区)などと連携しアンモニアを利用する船舶について2025年をめどに開発する計画を進めている。一方、JMUも日本郵船などとアンモニア燃料船などの研究開発に着手している。
「ゼロエミッション船」実用化
ゼロエミッション船をめぐっては中韓勢も開発を強化することが予想される。前田社長は「環境性能では日本がトップを走っていると自負しており、アンモニアを燃料に使う船舶などにも対応する」と説明した。 国内1位、2位連合の形成を皮切りに再編の動きが広がっている。国内勢に追い打ちをかけるように、新型コロナウイルス感染症の影響で商談が停滞しており、先行きが見通しにくいことも理由だ。サノヤスホールディングス(HD)は2月末に、祖業の造船事業を新来島どっく(東京都千代田区)に売却する。また川崎重工業も4月に、船舶海洋事業をエネルギー・環境プラント事業と統合し、船舶を建造する坂出工場(香川県坂出市)を水素事業の拠点に再編することを打ち出している。「水素分野で独自性を発揮する」(橋本康彦社長)ためだ。 造船業界では安定操業の目安が2年分の工事量とされているが、20年11月末の時点で輸出船の手持ち工事量は約1年分しか残っていない。今治造は「日本シップヤードの設立をきっかけに受注機会を増やす。受注残も踏まえると、事業所の統合は考えていない」(檜垣幸人社長)という。ただ、新型コロナの感染拡大が収束する見通しがたたず不透明な経営環境が続けば、経営に行き詰まる造船会社も出かねない。立て直しは時間との闘いでもある。