Keishi Tanaka「月と眠る」#10 いろんな子どもたち
Keishi Tanaka「月と眠る」#10 いろんな子どもたち
ランドネ本誌で連載を続けるミュージシャンのKeishi Tanakaさん。2019年春から、連載のシーズン2として「月と眠る」をスタート。ここでは誌面には載らなかった当日のようすを、本人の言葉と写真でお届けします。 Keishi Tanakaさんの連載が掲載されている最新号は、こちら! >>>「ランドネNo。114 11月号」。 ランドネの最新号では、東京生まれ東京育ちの若い友だち(中学2年)をキャンプに連れ出した日の思い出を書いた。中2男子は僕の思惑通りにキャンプにハマることはなかったが、それでよい。そんな話もいつかの酒の肴にしよう。簡単に言ってしまうとそんなオチの話。2行で終わる話ということがバレてしまったが、2行で終わることをおもしろく書き残すのが物書きの仕事と、だれかが言ったとか言わなかったとか。とにかくおもしろい文章を書く人はそんな風に見える。自分のことではなく、目標みたいな話。 さて、冒頭2枚の写真でお気づきだと思うが、目立ってる少年はどう見ても中2には見えない。そう、じつは弟(小学2年)もいっしょにキャンプデビューを果たしていたのだ。本誌ではストーリー構成上存在を消させてもらったが、確かに彼はそこにいたし、なんなら兄よりもキャンプを楽しんでいた。キャンプデビューするなら、中2より小2。当然といえば当然の話。自分の過去と重ね合わせながら、中2は我が道を行けばいいさと思っていた。 大人はテントを建てるところから遊びを感じているが、子どもは違う。早く「本当の」遊びを求めているように感じた。ここまではお手伝い。そしてここからが自分たちの時間だと言わんばかりにギアを入れ替える。木に括り付けられたブランコに何度も乗り、持ってきたバドミントンをやり、スキー場の坂をダッシュして転がり落ちていた。 ボルダリングの初体験もした。新型コロナの影響で、時間を区切り消毒などを済ませてから、予約した順に1組ずつ遊ぶスタイル。つまり貸し切りの壁。自分たちで遊びを考えて発展させていく。言うまでもなく、子どもは遊びの天才だ。 自分たちのサイトに戻り、1分だけテントの中でひとりになった。気づけば太陽はだいぶ傾いていて、もうすぐ暗闇が訪れる。それまでに焚き火の準備と夕食の準備をしなければ。 いまだに焼きマシュマロの魅力に気づけてない僕を横目に、ふたりとも一生懸命にちょうどよい焼き加減を求めてマシュマロを炙り続ける。なかなか焼き目が付かないと思って火に近づけすぎると、一気に焦げる。意外と技術がいる。 花火をきれいとか楽しいと思う気持ちは、子どもの頃から変わってないように思う。こんなにも世代を越えて愛されているものがほかにあるだろうか。来年は大きな花火大会が開催される世の中になっていることを願うばかりだ。 話が急転するが、ようやくライブをする機会が少しだけ戻ってきた。最近の話だと、大阪の万博公園や北海道東川市での野外イベントに出演した。 もちろん入場制限や細かい感染対策なんかもあり、お互いがライブ以外のことに気を使うという意味ではまだまだ不完全な形かもしれないが、最大限に注意をしながら、楽しいという感情を少しづずつ積み重ねることも重要だ。体といっしょに心も守らないといけない。 おなじように、こんな時期だからこそと考えている同志は全国にいて、そこから届く声にはできるだけ応えていきたい。いまだからこそのやり方をみんなで考える。そういう意味でも、年内は野外ライブを積極的にやろうと考えている。 先日、地元北海道へライブをしにいったときは、ライブ以外の時間もなるべく外にいようと思い、多くの時間をキャンプ場で過ごした。実家にあるテントを借りて近所に新しくできた「十勝ポロシリキャンプフィールド」に行ったり、両親のオススメのキャンプ場「日の出公園オートキャンプ場」に連れて行ってもらったり。それこそ、子どもの頃にキャンプの楽しさを教えてくれた両親と、約25年ぶりにいっしょにキャンプをした。ここでは僕が子どもだ。 大きめの焚き火台を用意してくれたり、僕が子どもの頃に使っていたタープを久々に張ってみたり、両親もそれなりに楽しみにしてくれていたようだ。それだけでなんだか心が満たされた。 ちなみに、懐かしのタープはこれ以上ないほどに加水分解を起こしていた。予想通りの状態に笑いが溢れる。 逆に新しいギアも使わせてもらった。今年の親父の誕生日にプレゼントしたメスティンで米を炊き、去年の父の日にプレゼントしたホットサンドメーカーで朝食を楽しむ。まるで自分のために買ったような展開だ。 今月は少し思い出をごちゃ混ぜにしつつも、子どもという共通点でまとめてみた。東京の子どもは中2と小2、北海道の子どもは37歳ではあるが(笑)、子どもと大人がいっしょに楽しめるのがキャンプの魅力。今年はとくに外遊びの底力をみせるときだろう。