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サルを使ったヤシの実収穫の動画に批判 世界2位のタイのココナツ産業が苦境に

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日本食糧新聞

タイ料理の材料にもなり、近年は健康や美容にも良いとされているココナツミルク。この輸出で世界第2位にあるタイのココナツ産業が苦境に立たされている。きっかけは、7月に米国の動物愛護団体によってインターネット上に投稿された1本の動画。野生のサルを使ってヤシの実を収穫する様子が「動物虐待」とされたのだ。サルを使った収穫は、過去の話と否定するタイ政府だが、欧米の小売業はいち早く反応し、取り扱いを取りやめた。輸出は30%も減少している。 動画を公開したのは1980年設立の米動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々(PETA)」(米バージニア州)。首輪をつながれたブタオザルがヤシの木に登り、ココナツを収穫する様子が収録されている。 同団体は、幼いころから調教されたブタオザルが1日に最大1000個もの実を採らされていて、抵抗を抑制するために犬歯が抜かれることがあるとして、タイ産製品の不買運動を併せて訴えた。 ボイコット運動は、タイの業界大手「テーパドゥンポン・ココナツ社」が製造販売する「チャーウ・コ」と、同「タイ・アグリフーズ・パブリック社」の「アロイD」の2ブランドを名指しして展開された。 このうちテーパドゥンポン・ココナツ社は1976年設立。直近の売上高は約68億バーツ(約230億円)と業界の老舗だ。業界トップを狙い撃ちした運動によって、タイのココナツ産業は大混乱となっている。 これにいち早く反応したのが欧米の小売業だった。英モリソンズやブーツなどのスーパーが相次いで販売を停止。米ウォルマート傘下のアズダも取り扱いを中止した。英国では他の小売店も追随するようになり、間もなくほぼ全土に浸透。PETAは、運動によって欧米の2万5000店以上の小売店で2ブランドを中心としたタイ産ココナツ製品が姿を消したと“勝利宣言”をした。 この結果、2019年に約128億バーツあったタイ産ココナツミルクの輸出は打撃を受け、テーパドゥンポン・ココナツ社によると最大で30%もの落ち込みだという。新型コロナウイルスの感染拡大によって4~5%減少していたところへ、痛い追い打ちとなった。 ただ、タイ政府も手をこまねいているわけではなかった。指摘された野生のサルを使った収穫は過去のもので、現在では観光用にサルが調教されるケースはあるものの、産業として組織的に捕獲されることはないと反論。名指しされたテーパドゥンポン・ココナツ社も、契約農家とはサルを使わないとする覚書(MUO)を締結しているとして法的措置も辞さない構えだ。 商務省も7月下旬に、タイにあるオランダやスイスなどの大使館員らをバンコク西郊のサムットソンクラーム県やナコーンパトゥム県の農場に招いて、実態の公開と説明に追われた。しかし、それでも懸念は払拭(ふっしょく)されていない。 というのも、ブタオザルが多く生息するタイ南部は広大なヤシの実農園が広がる産地で、元手が掛からない野生のサルの捕獲・調教が、個々の農家レベルでは今もなお厳然と存在するからだ。ブタオザルは温厚な性格で、ヤシザルやココナツモンキーなどの別名もある。タイ南部やマレーシアでは古くから飼いならされ、ヤシの実などを収穫する文化が数世紀もの間、展開されてきた。 年間80万トンのヤシの実と、11万トンのココナツミルクを製造する一大生産地のタイ。コロナ禍で各種国内産業が疲弊する中、海のかなたから仕掛けてきた異文化による「動物虐待」の攻撃に、すっかり頭を抱えている。(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)

日本食糧新聞社

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