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歌舞伎町とともに半世紀弱 新宿タイガーが感じ取ったコロナ後の変化

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朝日新聞デジタル

マスクをした人々が行き交う東京・歌舞伎町に、どこからともなく演歌が流れてきた。前かごにラジカセを載せた自転車をゆっくりこぎながら、その人は現れた。 【動画】素顔を見せた新宿タイガー、歌舞伎町を語る  原田吉郎さん(72)、人呼んで「新宿タイガー」。ど派手な姿で45年近く、新宿・歌舞伎町のかいわいを自転車で回り、新聞を配り続けてきた。  新型コロナウイルス感染拡大の元凶とみなされた「夜の街」のいまを知ろうと、新宿を知りつくした彼に案内役を頼んだ。

 向かったのは新宿ゴールデン街。タイガーさん行きつけのバー「Troll(トロール)」を訪ねた。  チャージなしのスタイルが受けて、近年は客の9割ほどが外国人だった。「東京五輪・パラリンピックの期間中は、安全のためにゴールデン街への入場規制をかけないといけないかも」。店主のマリーさんによると、そんな話が持ち上がっていた。  だが、新型コロナが街を一変させた。4月に国の緊急事態宣言が出されると、「ゴールデン街全体が真っ暗。こんなことは今までなかった」。  トロールからいくつか角を曲がった先にある「夢二」。壁に飾られた竹久夢二の絵から出てきたような和服姿のおかみ・速水今日子さんが出迎えてくれた。  休業中、常連客からは先払いやカンパの申し出、励ましをたくさんもらった。それでも「再開できる時にシャンパンでも飲ませて」とすべて丁重に断ったという。完全予約制やマスク着用、泥酔禁止などの対策を取って、段階的に店を再開してきたが、売り上げは開業以来最低だ。

 「新宿タイガーは、シネマと美女と酒と夢とロマン」。そう自ら表現するように、タイガーさんは古希を超えた今でも、週に2、3日はゴールデン街などを訪れる。年齢を考え、今年2月いっぱいで新聞配達の仕事は引退した。都内で新型コロナの感染が広まったのは、その直後だった。緊急事態宣言で、タイガーさんが愛するゴールデン街も、映画館も、一斉に閉まった。  「ゴールデン街からあんなにあかりが消えたのは、この40年で初めて。そりゃあ寂しかったよ」  ゴールデン街の店で、タイガーさんは時折、マスクをずらしてビールを飲みながら、店主らの話に聴き入っていた。  「ゴールデン街の花見も祭りも、コロナのせいで今年はなくなっちゃった」。恨めしそうに笑いながら「ウイルスが相手じゃ仕方ないけどね」とこぼした。

朝日新聞社

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