非核化に向けた米朝交渉の「本丸」はどこにあるのか?
アメリカのポンペオ国務長官は7日、北朝鮮の平壌で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談しました。トランプ米大統領と金委員長の2回目となる米朝首脳会談の早期開催で一致したと報じられています。「非核化」に向けた神経戦が続く米朝交渉の核心部分は何か。元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【写真】北朝鮮の非核化へのプロセス カギ握る「検証」作業
米朝交渉は実際進んでいるのか?
ポンペオ米国務長官と金委員長の会談が7日に平壌で行われました。2回目の米朝首脳会談のほか、「非核化」に向けた議論もしたといいます。ただ「非核化」をめぐる米朝交渉は実際のところ進展しているのか、どうも状況が分からないと感じている人が多いようです。 8月にはポンペオ長官の訪朝についてわけのわからないことが起きました。同月23日にポンペオ長官が北朝鮮訪問を発表しましたが、翌日にはトランプ大統領がそれを中止させるとツイートしたのです。一国の外相が発表したことを、翌日、大統領や首相が中止させることなど異例中の異例であり、他の国ではありえないことでした。 米朝交渉が分かりにくいのには、いくつか原因があります。 第1に、米朝両首脳のトップダウンで進められていることです。トランプ大統領は就任以来何回も、非公式に、金委員長と会談しようと示唆してきました。一方、金委員長は「非核化」の新戦略を大胆に打ち出しました。両方とも官僚が準備したのでなく首脳自身の判断と決定によるものでした。 その後も、トップダウンの傾向は続きました。ますますひどくなった面もありました。ポンペオ長官の訪朝を中止させたこともその例です。さらに、両首脳は何回も書簡を交換していますが、このことも交渉がトップダウンで行われていることを示唆しています。 トップダウンに加え、トランプ大統領の行動はきわめて個性的でした。金委員長の行動を非常に高く評価し、9月29日には、「我々(トランプ氏と正恩氏)は恋に落ちた」とまで述べました。ポンペオ長官の訪朝をいったん止めて金委員長に心配させ、前向きの書簡を受け取ると一転して絶賛したのです。このような態度もトランプ氏独特のものでした。 また、トランプ氏がそのように芝居じみた振る舞いをしても対応できたのは絶対的な権力を持つ金正恩委員長だったからでしょう。