貴景勝、黒星スタート 自身で墓穴…引き技不発/初場所
大相撲初場所初日(10日、両国国技館)新型コロナウイルスに感染した白鵬(35)と腰痛の鶴竜(35)の休場により、3場所連続で初日から両横綱が不在の場所で、自身初の綱とりに挑む大関貴景勝(24)は小結御嶽海(28)に押し出され、手痛い黒星発進となった。ともに初の休場明けで、かど番の2大関は明暗を分け、正代(29)は平幕北勝富士(28)を寄り切ったが、朝乃山(26)は大栄翔(27)に押し出された。 揺るぎない型を持つ大関が、自ら型を崩して自滅した。初の綱とりに挑む貴景勝が、御嶽海に押し出されて黒星発進となった。 立ち合いから相手の圧力を受けて押し込まれた。細かく突き返し、相手に引かせる場面をつくりながら、珍しく逡巡(しゅんじゅん)して足を止めてしまう。しかも、自身が墓穴を掘る引き技を見せて万事休した。突き押しに徹して大関まで射止めた貴景勝には、もどかしさの残る今年初の取組となった。 「理由があって負けている。修正していかないと…。切り替えていかないといけない」。落胆や動揺しているような表情は見せず、淡々と振り返った。 新型コロナ関連で力士65人の全休が決まり、感染した白鵬ら関取15人が休場。けがの鶴竜と合わせて十両以上で16人の関取が休み、初日からでは戦後最多となった。貴景勝の綱とりへの注目度、期待値をさらに上げることになるが、「自分ではいつも通りだったけど、勝たなきゃ意味がない」と重圧は否定した。 悲観することはない。昭和以降、綱とり場所で栃錦や千代の富士ら6人は初日黒星ながら昇進を果たした。まだ、初日。大関は「伸び伸び自分の相撲を取り切れたら、いいと思う」と前を向く。 11月場所後、師匠の年寄名跡の交換により部屋の名称が「常盤山部屋」へ改まり、同部屋の力士として初めて迎える場所でもある。名跡の「常盤」は和歌の歌枕が由来とされ「常緑の木々が繁茂し、秋にも紅葉しない」から転じて、「永遠に変わらないもの」として詠まれる。不変の突き押しを信じ、前へ出るしかない。(奥村展也)