【漫画家に聞く】今のXは「おもしろい漫画」を描くだけじゃダメ? SNSと漫画家の関係に鋭く迫る『アルゴリズムの向こう側へ』
各SNSに実装されているアルゴリズム。この分析が多くのクリエイターにとって成功のカギになる反面、計算式を意識するあまり創造性を損ねる可能性もあるだろう。それについて漫画『アルゴリズムの向こう側へ』は、漫画家とフォロワーの関係を恋愛に例えながら表現している。 今のXは「おもしろい漫画」を描くだけじゃダメ? SNS漫画『アルゴリズムの向こう側へ』 作者はエッセイ漫画を数多く投稿している、さーかさん(@saka02_)。本作はどのようなきっかけで生み出されたのか。(小池直也) ――本作の反響はいかがですか? さーか:この漫画を読んだ上で「わざと画面放置してポストに2分以上滞在します」と言ってくれたフォロワーさんがいて、本当にありがたいなと思いました。あとは普段リアクションしてくれないフォロワーさんが、今回はいいねとリポストをしてくれたので、読んだ人に刺さる漫画を描けたかなと。ちょっと安心しました(笑)。 ――着想や制作のきっかけについて教えてください。 さーか:最近、以前バズった漫画を再掲したのですが、信じられないくらい少ない数のいいねだったんです。そこで「同じアカウントで同じ漫画なのになんでだろう?」と自分なりに分析したのがきっかけでした。 有名なSNS漫画家さんがアルゴリズムを意識した投稿の仕方をしていて、実際にインプレッションが増えたのを目の当たりにしたのも大きかったです。 ――Xや人気商売を恋愛に例える話も興味深かったです。 さーか:裏社会の人が言いそうな「舐められたら終わりだ」という言葉があるじゃないですか。だったら人気商売は「冷められたら終わりだ」と以前から思っていました。そして、ある日「これって恋愛じゃん!」と腑に落ちてネタを作ったんですよ。その結果、やはり恋愛と一緒だと確信したので漫画にしました。 ――アルゴリズムを分析については功罪があると感じますが、さーかさんはどうお考えですか? さーか:人気の漫画家さんの場合、本当はアルゴリズムなんて気にしたくないと思ううんです。でも、どれだけ面白い漫画でも読まれなければ意味がない。だから魂を売るつもりで、アルゴリズムを意識した漫画を投稿している気がします。 反対に新人や無名の人はアルゴリズムを意識したら色んな人に読んでもらえるので、そこは良い面なのかなと。 ――SNSと漫画家の関係の未来について、イメージや予測などがあれば教えてください。 さーか:今はSNSやKindleインディーズなどで、誰でも漫画を世に出せる時代。この先漫画家を名乗る人が増えていくと思います。ただ読んでもらって満足する人、冷静に自分の立場を見極めながら努力して漫画で稼げるようになる人との両極端になる気がしますね。 ――さーかさんはエッセイ漫画をこまめに投稿されていますが、そのモチベーションはどういったところで湧いてくるのでしょう? さーか:いいねとフォロワーが増えていくのが快感なので、それはモチベーションですね(笑)。あとは漫画家になるのが子供の頃からの夢だったので、単純に夢を叶えたくて描いています。 ――憧れ、影響を受けた作品や作家はいますか? さーか:『HUNTER×HUNTER』を読んで漫画を描き出したので冨樫義博先生です。 ――作家としての展望、なりたい作家像を教えてください。 さーか:やっぱりSNS漫画を描いてご飯を食べられるようになりたいですね。今の投稿頻度だと厳しいのですが……(笑)。今はまず1万フォロワーを目指して頑張ります。
小池直也