陸上自衛隊で集団いじめ 「レモン汁を右目に…」先輩隊員らの“理不尽すぎる”パワハラ 裁判所はどう判断?
Xさんにも非がある?
先輩Dさんは、裁判で以下のような反論をした。 先輩Dさん 「上記行為3・5・9に至った背景には、Xさんが私の指導に反発していたという事情があります。なので過失相殺されるべきです」 しかし、裁判所は一蹴。 裁判所 「仮にそのような事実があるとしても、上記の各行為のような不穏当・不適当な態様による指導を受けることが正当化されるものではないので、過失相殺は認められない」 パワハラに当たるかの判断基準は、「業務上必要かつ相当な範囲を超えているか」にある。しかしどのような理由であれ、先輩Dさんの指導(ペンチで指を挟む・頰を殴る・腹を殴るなど)がそれを逸脱していたことは明白であろう。
慰謝料の金額
裁判所が命じた金額は以下のとおりである(詳細は割愛)。 国 175万円 先輩Dさん 16万円 先輩Eさん 22万円 先輩Fさん 22万円 先輩ら連帯(Dさん・Eさん・Fさん・Gさん・Hさん) 27万円 私は多くのパワハラ裁判例を読んでいるが、自衛隊のパワハラはヒドイ事件が多い。 上述した、パワハラであるかを左右する「その指導は業務上必要かつ相当な範囲を超えているか」の判断は難しいため、グレーなケースも多々ある。しかし、自衛隊のパワハラ事件には“真っ黒”といわざるを得ないケースが散見される。 近年、自衛隊の人員不足が叫ばれている。パワハラ事件が次々と明るみに出て、マイナスのイメージが広がっているのも原因ではないだろうか。上層部は本気でパワハラ撲滅に取り組んでほしい。 林 孝匡(はやし たかまさ) 【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。情報発信が専門の弁護士です。 専門分野は労働関係。好きな言葉は替え玉無料。
林 孝匡