有賀 誠のHRシャウト!人事部長は“Rock & Roll”【第9回】 人事部とリーダーシップ(その5):ポジティブな姿勢
前に進む一歩
前回まで、「リーダーシップ = 目標を定め、チームを作り、成果を出す力」と定義し、自身がそのような力を備えると同時に、人事部として優れた経営リーダーシップを持つ人間を発掘・育成・登用するべきことを述べてきました。今回は、そのようなリーダーに必要とされる姿勢や志向性について、私の考えをご紹介したいと思います。 すでに、自身の中でのポジティブ反転(「××だからできない」→「〇〇すればできる(かもしれない)」)の重要性については説明しました。これを、人に対してのアプローチにも適用してみましょう。英語で、”The glass is half empty” に対して、”The glass is half full” という表現があります。同じ事象をネガティブに見るか、ポジティブに見るか、という違いです。 ある営業マンの今期の予算が100であったとしましょう。彼は90しか達成できませんでした。さて、この▲10に関して、リーダーであるあなたはどのようにコミュニケーションをとるのでしょうか? できなかった▲10を徹底的に責めるのか、達成した90を認めた上で残る▲10の攻略方法やキャッチアップを議論するのか。もちろん、環境やプロセスにもよるのですが、本人が全力で努力をしたのだとすれば、私は後者のアプローチ(できた部分をまずは認める)をとりたいと思います。 できなかった▲10を徹底的に責めるのか、達成した90を認めた上で残る▲10の攻略方法やキャッチアップを議論するのか。 要は、終わってしまったことを必要以上に言及するよりも、その営業マンの来期に向けての士気高揚をはかろうということです。もちろん、叱られた方が発奮するメンバーであったなら、それを否定するものではありません。あくまでも、組織文化やメンバーのキャラクターを踏まえての判断となるわけです。 大きな目標を掲げることは大事ですが、勝負において常に満塁ホームランやハットトリックを狙う必要はないと思うのです。送りバントやパス回しも勝利に結びつく戦術です。少しずつでも、前に進み続けることが重要ではないでしょうか。「昨日よりは今日が良い、今日よりは明日が良い」を心がけていると、気がついたら思いのほか進んでいるものです。リーダーとして、たとえ小さかったとしても、あるいは期待値に届かなかったとしても、前に進んだ一歩を認知し、祝福したいと思います。 ただし、リーダーであるなら、ゴールはイメージしておくべきでしょう。リーダーは、一歩ずつ進む中、到達点や時間軸を見通しておく必要があります。そうでないと、進んではいるものの誤った方向に向かっていたり、最終的な納期に遅れたりするリスクがあるからです。