にしおかすみこの大晦日、認知症の母、ダウン症の姉、酔っぱらいの父とのバトルと家出
記念日がその大切さを知る時ならば、介護に向き合う方々にとっては毎日が敬老の日といえるかもしれない。 【写真】にしおかすみこさんが泣いて帰宅したら…認知症のお母さんが書いた手紙 「うちは、 母、80歳、認知症。 姉、47歳、ダウン症。 父、81歳、酔っ払い。 ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。45歳。独身、行き遅れ。 全員ポンコツである」 こんな書き出しで始まったにしおかすみこさんの連載「ポンコツ一家」は、2020年に母の認知症に気づき、実家に暮らすことを決意したにしおかさんのその後を率直につづっている。 2023年刊行された書籍『ポンコツ一家』につづき、2024年9月20日には、さらにその状況が「パワーアップ」した『ポンコツ一家2年目』が刊行となる。本書は連載15編に書き下ろし4編、そして番外編1編を加えて加筆修正したものだ。 そこで、敬老の日を記念して1冊目の『ポンコツ一家』から、ネット上では読むことができなくなっている章を3週間の限定公開する。特別抜粋掲載するのは、連載時も大きな反響があった「大晦日の大事件」について。 前編「にしおかすみこ、認知症の母、ダウン症の姉、酔っぱらいの父と迎えた大晦日の大事件」ではにしおかさんが掃除も料理もやりながら、姉の粗相に直面したところまでお伝えした。しかし片づけようとしない家族に「何で私一人だけが掃除して洗濯して料理して、おまえら何してんだよ!!」と思わず切れてしまったにしおかさん、その後どうしたのか。
姉が掃除していた
居間をまたぎ二階に上がった。 姉がフローリング用ワイパーの柄を持ちシートをつけずに床を拭いていた。 掃除していた。……ただ、それでは床全面にコーティングされてゆく。 「いいから!」姉から柄を奪いとり「出てって! 黙れ!」と言った。 「すみちゃん、あのね、わたしまだ何にも言ってないよ」 「うるさい!」と、姉も、姉に声をあららげた罪悪感も全部部屋から追い出した。 強烈に臭い。ここは昨日掃除したばかりなのに。 靴を履き雨具を着た。後で全部脱ぎ捨てよう。窓を開ける。手袋をし、雑巾、除菌剤、アルコールあらゆるもので排除した。床の目地、木目の部分は歯ブラシでこすった。 私は、姉の風呂問題にはほぼノータッチだ。だから後ろめたい。 でもこれは言っておこうと下に降りる。 「老老介護はしんどいんだよ。今すぐじゃなくても、お姉ちゃんを施設に預けるとか、プロの人に入ってもらわないと。みんな共倒れになるよ!」と。母のことで手いっぱいの私は、それを言い訳に姉のケア知識はもっと何も知らない。それでも外の助けが必要だろうと思う。