NBAでの契約下に決断したBリーグでのキャリア 強豪・千葉ジェッツで渡邊雄太に求められる役割は何か【コラム】
大好きなバスケを楽しみながら、千葉を勝利に――
もっとも、プレーに馴染みのファンなら熟知しているはずだが、渡邊はもともとボールを支配し、強引に点を取りにいくタイプの選手ではない。カレッジ時代も3年時にはエース格、4年生時には断然のエースとして平均16.3得点をマークしたが、当時も「僕は1人で得点を稼ぐっていうタイプではない。常に周りを巻き込むことを考えています」と語っていた。 サイズ、シュート力、ボールハンドリング、ディフェンスなどをすべて兼ね備えたオールラウンダー。日本代表でも見せてきた通り、もちろん20得点以上を取る力はあるが、シュートが不調の日でも、別の形でチームに貢献できるのが長所でもある。 Bリーグファンならご存知のはずだが、創設からトップクラスのチームとして成長を続けてきた千葉では、渡邊にだけ大車輪の働きが期待されているわけではないだろう。スポーツライターであり、Bリーグをカバーする牧野豊氏はこう語る。 「昨季のジェッツの課題はサイズ不足でした。渡邊には高さのあるSFとしてトランジション、アウトサイドシュート、ディフェンスなどが期待されているのでしょう。ただ、今オフに渡邊以外にも身長206cm~209cmの走れる選手を獲得しており、渡邊1人に負担がかかるチーム構成ではありません」 千葉はチームの看板である冨樫勇樹を軸に昨季も東アジアスーパーリーグ、天皇杯の2冠を達成した。牧野氏の指摘通り、オフに補強は渡邊だけではない。そんな中で渡邊に要求されるのは、状況に応じた好バランスの貢献。展開に応じてチームを勝利に近づける仕事。それが求められる職場はまさに渡邊に適した環境であり、千葉ではオールラウンダーぶりを存分に見せることができるのではないか。 「元NBA選手としてのプレーを皆さん、期待してくれる部分があるんじゃないかと思います。そういう期待に応えられるようなプレーをコート上で発揮できたらなと思っていますが、これはいつも同じ考え方をするようにしているんですけど、目の前のことを全力でやれば、結果はおのずとついてくるんじゃないかなと思っています」 バスケットボールキャリアも後半に入って迎える千葉でのプレーを前に、8月27日の入団会見で、渡邊は自然体で臨む意向を話していた。 その言葉通りなのだろう。パサー、シューター、リバウンダーとしても存在感を発揮し、トランジションのフィニッシャーとなり、ディフェンスでの頑張りが必要ならストッパーに――。そんなオールマイティな渡邊が見られる日が近づいている。 日々得点力を爆発させずとも、大好きなバスケを楽しみながら、千葉を勝利に導くプレーができれば、多くのファンを歓喜させることができるはずである。 [取材・文:杉浦大介]