アート界影響力ランキング「Power 100」、2024年の1位は「あいち2025」の芸術監督フール・アル・カシミ
アート界の影響力ランキング「Power 100」
毎年恒例のアート界でもっとも影響力のある100組をランキングで発表する「Power 100」の2024年版が発表された。イギリスの現代美術雑誌『ArtReview』が2002年から毎年発表しており、全世界のアート界の識者から匿名で寄せられた意見をもとに、この12ヶ月間に現代アートの発展に貢献した100組をリストアップする。
1位はフール・アル・カシミ
1位に選出されたのは、来年愛知県で開催予定の「あいち2025」の芸術監督を務めるフール・アル・カシミ。 フール・アル・カシミは、アラブ首長国連邦をはじめ中東、そして世界中のアートをつなぐ支援者として、2009年にシャルジャ美術財団を設立し、現在は理事長兼ディレクターを務める。新たな試みやイノベーションの支援に情熱を注ぎ、国際巡回展をはじめ、レジデンス・プログラム、コミッション・ワークや制作助成、パフォーマンスや映画のフェスティバル、建築物の調査や保存、幅広い年齢層に向けた教育プログラムまで、同財団の活動領域を広げてきた。 第6回シャルジャ・ビエンナーレ(2003)の共同キュレーターとなって以来、同ビエンナーレのディレクターを務め、2023年の第15回シャルジャ・ビエンナーレのキュレーターに就任。また、2017年には国際ビエンナーレ協会会長に選出されたほか、シャルジャのアフリカ・インスティテュート会長や建築トリエンナーレ会長兼ディレクターとしても活動。過去にはMoMA PS1(ニューヨーク)やユーレンス現代美術センター(北京)などのボードメンバーも歴任。 またアル・カシミは王族の一員でもあり、そうした特権的地位を使いながら、パレスチナやレバノンで起きている虐殺や世界中の紛争などの難しい議論にスポットライトを当て続ける数少ない発言者であることも「Power 100」において評価されている。
2位はリクリット・ティラヴァーニャ
展覧会場でタイ料理パッタイを振る舞うなどのパフォーマンスを行い、「関係性の美学」の中心的作家として知られるリクリット・ティラヴァーニャが2位に選出。 近年のキュレーターとしての優れた業績が評価された。芸術監督を務めた、「「岡山芸術交流 2022」、共同キュレーションした「タイランド・ビエンナーレ チェンライ 2023」を経て、今年はソウルのリウム美術館で若手作家を紹介する展覧会シリーズ「アートスペクトラム」の2024年版「Dream Screen」展を監修した。 またこの秋開催された「森の芸術祭 晴れの国・岡山」で地元の食材を用いたお弁当や、織物の作品を発表したことにも言及されている。 近年の「Power 100」に引き続き、ブラック・アートのアーティスト、思想家、研究者が上位を占める結果に。3位はブラックスタディーズの作家・研究者のサイディヤ・ハートマン、4位はアーティストで映画監督であり『ブリッツ』『占領都市』で話題のスティーブ・マックイーン、5位は人権侵害を調査する多分野にわたるコレクティヴ、フォレンジック・アーキテクチャー。 昨年の1位で、11月に開幕したベルリンの新国立美術館での個展でも大きな議論を巻き起こしたナン・ゴールディンは今年も7位と大きな注目を集めている。 日本からは62位に片岡真実(森美術館館長)、Take Ninagawaの代表で、「アートウィーク東京」の共同設立者である蜷川敦子が85位に付けている。
Art Beat News