家系ラーメンの「町田商店」が超えた「多店舗展開10億円の壁」 カギはシステムパワー経営にあり
皆さんこんにちは、飲食店コンサルティング「スリーウェルマネジメント」代表の三ツ井創太郎です。 【画像で見る】町田商店とプロデュース店舗の違い 新型コロナウイルスの感染再拡大や「Go To Eat」ネット予約キャンペーンの終了など、外食業界はまだまだ大変な状況が続いています。大手外食各社の決算も発表されていますが、大変厳しい決算内容となっています。 しかしこうした状況下においても、2020年5月~10月の売上高が対前年同期比125.3%という好業績を実現している外食企業があることを皆さんはご存じでしょうか? その企業とは、「横浜家系ラーメン町田商店」を展開する株式会社ギフト(東京都町田市)です。
513店舗を展開する家系ラーメン町田商店グループ
ギフトは、直営店とプロデュース店舗を含め513店舗(20年7月時点)を展開しているラーメンチェーンです。 幼少の頃からラーメンが大好物だったという同社代表の田川翔氏は、高校卒業後に有名繁盛ラーメン店で6年間修行しました。そして、08年に東京都町田市に個人事業主として「横浜家系ラーメン町田商店」を創業しました。 ラーメン職人として念願の1店舗目を開業させた田川氏ですが、なんとたった10年後の18年にマザーズ市場に上場を果たします。さらに、コロナ禍真っ只中の20年9月には東証一部へ市場変更しています。19年10月期の決算では、年商90億円、営業利益10億円という好業績を達成しています。さらには、先に述べたように、このコロナ禍で大多数の飲食店が苦戦を強いられる中でも、対前年同期比125.3%という驚異的な業績を達成しています。同社の強さの秘密を探ります。
「プロデュースモデル」で一気に店舗数を拡大
同社のビジネスモデルを分析する上で重要となるのが、その店舗形態です。 20年7月時点における町田商店の店舗形態の内訳を見ると、直営店が117店舗、プロデュース店が396店舗です。つまり、総店舗数の77%がプロデュース店となっています。 ラーメン店に限らず、飲食店が短期的に多店舗展開を実現するビジネスモデルの一つとして、フランチャイズモデルが挙げられます。一般的な「フランチャイズ」と町田商店が展開する「プロデュース」にはどんな違いがあるのでしょうか? フランチャイズにもさまざまな形態がありますが、一般的なモデルでは、屋号はブランド名に統一します。また、加盟金として100万~500万円、ロイヤルティーとして毎月売り上げの3~5%をそれぞれ支払う契約となります。さらに、店舗運営やメニューに関してもフランチャイズ本部の規定を順守することが求められます。 一方で町田商店の店舗プロデュースシステムを見ていくと「屋号自由」「加盟金0円」「売り上げロイヤルティー0円」「店舗運営・メニュー開発自由」となっており、通常のフランチャイズシステムよりも圧倒的に加盟のハードルが低いことが分かります。 こうしたビジネスモデルが開業希望者のニーズとマッチし、一気に加盟店を拡大させることに成功しました。本部としては、ロイヤルティーや加盟金を徴収しない代わりに、食材等を加盟店に卸すことで販売収益を得るビジネスモデルとなっています。本部は500店舗を超える店舗の食材調達を一元化することで、メーカーなどからの調達コストを抑えられます。そのため、開業者側も1店舗では仕入れることのできない価格で、食材などを調達できます。