スコットランドだけじゃない 世界の「独立予備群」は?
■フランドル(ベルギー)
1830年にオランダから独立したベルギーでは、北部のオランダ語圏(フランドル)と南部のフランス語圏(ワロン)の間に、言語や宗教(プロテスタントとカトリック)の違いだけでなく、所得格差があります。 第二次世界大戦以前、ワロンが工業地帯として栄え、この経済力を背景に、当時の憲法はフランス語だけで書かれるなど、人口で40パーセント前後のワロン人が事実上ベルギーを支配していました。ところが大戦後、アントワープなど港湾都市を抱えるフランドルが英米系企業の投資で発展。経済面での逆転を背景に地域間の対立が激しくなったため、1993年にベルギーは連邦制を導入し、各州の自治権を大幅に高めました。 しかし、2010年の総選挙で北部の分離独立を訴える「新フランドル同盟」(N-VA)が第一党に躍進。ベルギー憲法ではフランドルとワロンの各2政党が連立に合意する必要があるため、連立政権の樹立に540日を要する政治危機が発生しました。2014年5月の総選挙でもN-VAが第一党となり、ベルギーの分裂は現実味を増しつつあります。
■イタリア北部
イタリアは1861年に統一されましたが、工業化された北部と農業中心の南部の間の経済格差は、常に大きな問題でした。大戦後、政府主導で南部の経済振興が図られましたが、大きな成果は得られず、これによって北部住民の間に「ローマの中央政府が自分たちの富を奪って南部に注いでいる」という不満が拡大。このなか、1991年に設立された「北部同盟」は連邦化を訴え、1994年総選挙で躍進。連立内閣の一角を占めました。 しかし、政府内で地方分権への慎重論が根強かったため、1996年には北部同盟が「パダーニャ連邦」独立を一方的に宣言。ところが、イタリア政府だけでなく、どの国もこれを承認しなかったため、党勢はかえって衰退。北部同盟は分離独立を最終目標とする党の綱領は残しつつも、連邦制の導入や北部住民の利益をアピールする方針に転換しました。 一方、イタリアの調査会社SWGの2010年の世論調査では、北部住民のうち「パダーニャ連邦」の実在を信じる人は42パーセントでしたが、61パーセントが独立を支持。世界金融危機後の経済停滞は、「南部との決別」の欲求を後押ししているとみられます。