“M“は一体なにがそんなにスゴイのか? 700万円で買えるX4が1339万円になる意味
BMWのクーペSUV「X4」のハイパフォーマンスモデル「X4Mコンペティション」に田中誠司が試乗した。印象は? 【写真を見る】BMW X4Mコンペティションの詳細(23枚) 600万以上高価ゆえの専用装備
600万円超の価格差
8月1日からBMW「X3」/「X4」のMパフォーマンスおよびMモデルが軒並み約7%の値下げを受けた。ドイツのプレミアムブランドは、ライバル企業各モデルの性能や装備をよく観察しながら慎重に価格設定するのが通例だ。つまり為替相場が安定している現在、相当な要因がなければわずか登場1年で7%も値段を変えることはあり得ない。 ひるがえって現在の高性能SUVマーケットを見ると、直接のライバルであるメルセデス「GLC」「GLCクーペ」のAMGバージョンは東京の街中でよく見かけるし、ランドローバー「レンジローバースポーツ」やマセラティ「レヴァンテGTS」、アルファロメオ「ステルヴィオ・クアドリフォリオ」など500psクラスが数多ラインナップされるようになった。 これまで高性能セダンを好んでいた層が、どんどんこちらに移ってきているのではないだろうか。競争の激化を受け、BMWはシェア確保のため値下げに踏み切った、ということなのだろう。 ところで今回のテーマは、「約700万円から買えるX4のなかにあって、トップモデルである『X4Mコンペティション』の価格は1339万円。一体なにがそんなにスゴイのか、説明してほしい」とのことである。 BMWウェブサイトのカーコンフィギュレーターを操ってみると、X4の最廉価版である190psディーゼルの「xDrive 20d」(695万円)は、実は価格訴求のための見せ球であるのがわかる。ホイールや内装のオプション設定がなく、本気で売る気があるようには思えない。 代わって販売のメインストリームになりそうなのは「xDrive 20d M Sport」(774万円)だ。こちらには「M エアロダイナミクス・パッケージ」が備わり、19インチもしくは20インチのホイールが選択可能である。BMWが名乗る“スポーツ・アクティビティ・クーペ”(SAC)にふさわしい外観を手に入れられるし、内装も7種のレザーに5種のパネルを組み合わせられるので一気にリッチな雰囲気になる。 その上にくるガソリン252psの「xDrive 30i M Sport」(838万円)は、ディーゼル車の低い燃料コストや税金、長い航続距離などの恩恵を捨てさせるには中途半端なので、ぼくならもう87万円足してガソリン6気筒387psの「X4 M40i」を選ぶ。「M アダプティブ・サスペンション」「M スポーツ・ディファレンシャル」「M スポーツ・ブレーキ」を身につけ、装備は万全である。 F1から50ccミニカーまで、ぼくはありとあらゆる車に乗ってきたなかで、あれば嬉しいのはせいぜい350psくらいまでだと思っている。そこから先は自分の制御可能範囲を超えた速度域で求められるものなのではないかと。 だから前述のとおり500psを超える領域で高級SUVの覇権が競われていることには違和感も覚えるが、現実に1236万円出すと「X4 M」は誰にでも手に入る。