息をするだけで体内に…? 「マイクロプラスチック」は大気の中にも! 富士山頂の観測で発見
「ゲリラ豪雨」の原因にも?
マイクロプラスチックが引き起こすことは、まだある。 「東京などでゲリラ豪雨が起こるのは、大気中マイクロプラスチックが関係しているかもしれません」 雨が降るために何が必要かというと、水蒸気と上昇気流と、もう一つ、雲を作る「核」。 これまで雲を作る核には、“海塩粒子”、硫酸塩、硝酸塩などが考えられてきた。“海塩粒子”とは、波しぶきが空気中を運ばれているうちに水分が蒸発し、塩分が微粒子になったもの。そして、石炭燃焼などで生じた二酸化硫黄から生成した硫酸塩、自動車排ガスなどの窒素酸化物から生成した硝酸塩などだ。 これらは水蒸気を吸収しやすく雲粒(雲を構成する水滴や氷結晶)を作る。一方、プラスチックは水を弾きやすいので、マイクロプラスチックが雲を作る核になるとは考えられていなかった。 「ところが、実際に雲の成分を採取して調べたところ、酸素を含んでいる親水性の高いプラスチックや、劣化したポリエチレン、ポリプロピレンも多いことがわかったんです」 酸素を含まないプラスチックも、劣化すると水を弾きにくくなることが知られている。つまり、大気中にこのようなマイクロプラスチックが増えてくると、雲ができやすくなり、激しい雨を局地的に降らせる可能性が高くなるというのだ。 「しかも、上空は紫外線が強く、プラスチックが劣化しやすい。プラスチックが劣化するとメタンやCO2を放出してしまうんです」 ゲリラ豪雨だけでなく、温室効果ガスを増やす可能性もあるというのだ。 いったい我々はどうすればいいのか。 「家庭で使用したプラスチック製品を適切に廃棄することは大前提として、できるだけ屋外使用を目的としたプラスチック製品を使わないことです。 たとえば人工芝。あれはプラスチックの塊で、上で激しく動くからちぎれた人工芝が空気中に飛散するし、太陽光で劣化しやすい。人工芝は、できるだけ天然芝に変えたほうがいいと思います。 公園の遊具もプラスチックの使用を避ける。プラスチック製の植木鉢も、劣化してマイクロプラスチックになれば吸い込む危険性があります。できれば陶製にしたいものです」 ▼大河内博 環境化学者。早稲田大学理工学術院創造理工学部教授。環境問題の早期発見、早期解決に貢献できるような研究課題に取り組んでいる。最近力を入れているのは、富士山を用いた越境大気汚染・地球規模汚染観測、ゲリラ豪雨および山間部豪雨の生成機構、放射性物質の里山における動態と環境調和型除染技術の開発、カンボジアの大気汚染とアンコール遺跡への影響評価、大気中マイクロプラスチックの動態・起源・健康リスクの解明、早成桐によるグリーントランスフォーメーションなど。 取材・文:中川いづみ
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