息をするだけで体内に…? 「マイクロプラスチック」は大気の中にも! 富士山頂の観測で発見
また、自由対流圏では偏西風が吹いているため、東南アジアや中国からが運ばれ、日本上空ではマイクロプラスチックの濃度が高くなるという。 自由対流圏に運ばれたマイクロプラスチックは風にのって地球上を回る。上空をグルグル回っているだけなら、地上で暮らす我々には影響がないように思えるが、 「上空に高気圧が張り出すと下降気流が発生し、マイクロプラスチックが地上に落ちてきます。雨や雪などに取り込まれて落ちてくることもあります」 自由対流圏でマイクロプラスチックが検出されたということは、地球規模でマイクロプラスチックによる汚染が起きているということなのだ。 ◆「脳」からマイクロプラスチックが検出されたという報告も 一般的に、マイクロプラスチックとは5mm未満のプラスチックのことを指す。目に見えるほどの大きさである0.1mm以上のものは、空気中に上がってもすぐに地上に落ちるので、大気中に浮遊するマイクロプラスチックは、ごく微小のものになる。 この微小なマイクロプラスチックの影響ということで、いちばんに考えられるのは健康上のリスクだ。 大気汚染物質の中にはPM2.5と呼ばれる、直径2.5μm(マイクロメートル)以下の微小粒子がある。このPM2.5に、硝酸塩、硫酸塩、ブラックカーボン、有機物のほかに、マイクロプラスチックも含まれていることが大河内教授らの調査によってわかってきた。 2.5μm以下の大気汚染物質は、人の肺の中に入り込み、呼吸器系疾患や、不整脈など循環器系の病気のリスクを高めるといわれている。 「それだけではありません。プラスチックは環境中の有害物質と結びつき、濃縮してしまう。さらに、プラスチック自体も劣化することで有害物質を作り続けてしまうことが、我々のグループの研究でわかりました」 つまり、マイクロプラスチックを吸い込むと、健康リスクはさらに高まるというのだ。 「鼻や口から吸い込まれたマイクロプラスチックは肺にとどまるだけでなく、ナノプラスチックになって血管に入り込み、体中を巡ります。 これまで、血液脳関門という関所のようなところで止められるため、マイクロプラスチックは脳まで達しないと思われていましたが、今年になって脳からもマイクロおよびナノプラスチックが検出されたという報告がありました」 今のところ、それがどのような健康リスクを引き起こすのかわかっていないが、頸動脈プラークからマイクロプラスチックが検出された人は、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすいという事例が報告されている。